ぼくは「アメリ」が歴史的名作だと思っている人なのですが、「アメリのジャン=ピエール・ジュネ監督のコメディタッチな映画よ」て言われたら観ないわけにはいかなかったわけです。そしてとてもよかった…!
主人公の青年バジルのお父さんは地雷撤去の仕事をしてたんですが、仕事中のうっかりミスで地雷に吹っ飛ばされてしまいます。「父の死」という壮大なオープニングの映画なのですが、ぼくがいまさらっと書いたように、お父さんはさらっと死にます。まるで朝トーストが焼けたかのように。
そんなバジルも立派な大人になり、レンタルビデオ屋さんで働くのですが、お店の前で突如勃発したギャング同士の抗争で流れ弾を頭にくらい生死を彷徨います。
病院に担ぎ込まれ、頭を開いてみると弾丸は絶妙なところにめり込んでいて「今のところ頭に残ってても死なないけど、いつか死ぬかも」と「すごい難しいところなので摘出の途中でうっかり死んじゃうかも」という究極の選択に迫られた担当医のコイントスによって頭に弾丸が残ったままバジルは頭を閉じられ意識を取り戻します。
無事(?)生還し、いつものレンタルビデオ屋さんに仕事に行くと「バジルは死んだ」と思い込んでいてたボスは新人の美女をすでに雇っていました。
というわけでバジルはホームレスとしてその日暮らしを始めるのですが、とあるきっかけでホームレスの仲間達を得ることができ、幸せに暮らし始めます。
そんなおり、お父さんを吹っ飛ばした地雷を作った会社と、自分の頭の中にいまだ埋まったままの弾丸を作った会社を発見し、バジルはこの2社にホームレス仲間たちに協力してもらっての復讐を企てるのでした。
という出だしです。
社会のつまはじきにあってしまった「普通じゃない」人たちが、軍事産業で大きくなった企業に持てる力のすべてをぶつけて復讐という名のいたずらをする。バジルたちの背負った背景はとても悲惨なはずなのに、彼らの性格があまりにコミカル過ぎて微笑ましいんです。
人生はどんな状況に置かれても、ようは本人の気の持ちようなんだろうな。とつくずく思わされます。
天気が良いけどでかけるのが億劫な日なんかにのんびり見て欲しい映画でした。