クビもカジュアルな時代だから「ちょっと今から仕事やめてくる」と言わなくちゃ対等じゃないよなー

 現代日本社会の仕事観を見事に表現した素晴らしいフレーズのタイトルだな!と思いました。

最初におことわりですが、ネタバレは避けます。が、読み終えて感じたことを書くので物語を推測させてしまったらゴメンなさい。 

何かの番組で「1980年代生まれと、1990年代生まれは価値観がまったく違う」と申されていました。ぼくは1980年生まれなので、ちょうど転換期というわけで、どちらの価値観もなんとなくわかるなーとか思いながらその番組を眺めていたのですね。

この物語は「ブラック企業社畜生活が辛くて死ぬことを考えるくらいなら仕事辞めればいいじゃん」と訴えられた印象です。下町ロケットとか半沢直樹的なトラブルが起きたら「仕事から全力で逃げろ」というわけです。

80年代の思想だと仕事辞めるのと死がほぼ等価値で天秤のようにグラグラ揺れちゃうんですよね。仕事してないと、収入以上に自信とか世間の目とかそういう精神的なところがつらいですもんね。それくらいぼくらは「仕事してる」っていう事実に依存しようとする。そして「ちょっとつらいくらいで弱音吐くなんて、まったくゆとりは!」みたいなこともつい脳裏によぎっちゃう。

でも、そんな一方で「生きてるんならめっけもの。何も死ぬことないでしょう!」という気持ちもわかる。今の世の中は年功序列で給料も上がりながら定年まで働かせてくれる上に、お嫁さん候補の事務職の子が毎年入ってくる、なんていう夢のような仕事もほぼない。それなのに、わざわざ就職する意味あるの?ていう気持ちもわかるというインサイドヘッド状態なお年頃がぼくら世代なんじゃないでしょうか。

てなわけでこの本は読み終わるとやけにモヤモヤしました。でも、あれこれ考えさせてくれたので、読んでよかったな。って感じです。