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「自由に勉強ができる」って幸せはいつから負担になったんでしょうね?【読書感想】

りとですこんにちは!

今日は池澤夏樹さんの小説「キトラ・ボックス」を読み終わったので感想を書きます!いつも通り、あらすじを説明するために冒頭のネタバレを含みますのでご注意くださいね。

キトラ・ボックス

キトラ・ボックス

 

国家権力と戦う物語の続編?

池澤夏樹さんは以前「アトミック・ボックス」と言う小説を書かれています。こちらの小説もブログで書いてるのですが、サラッとぼくの言葉で説明すると以下の通りです。

「実は日本も戦後に秘密裏に核兵器開発をしていた!その開発に関わったが途中で離脱し、過去の経歴を全て隠して瀬戸内海で漁師になった男がいた。彼は今際の際に娘・美汐に自分の過去を告げる。世間に核兵器開発の過去がバレることを恐れた日本政府は、美汐に父親殺しの容疑をかけ全国指名手配にする(一家はずっと監視されていたのだった!)。美汐は自分の身の潔白と父の秘密を明らかにするために、日本の国家権力の中枢を目指す!」

このお話の面白いところは、美汐さんの一生懸命さにいろんな人が心を動かされて力を貸して、ギリギリのところで国家権力をかわしていくスリルと痛快さなんですよ。

んで、今回の「キトラ・ボックス」はその「アトミック・ボックス」の登場人物がたくさん出てきて今回の主人公「可敦」さんを助けるお話なんですね。

考古学冒険ファンタジー!

「可敦」は「カトゥン」と読むんです。

国立民族学博物館で研究員として働く彼女は、中国・新疆ウイグル自治区出身です。

そんな彼女のもとにある大学の教員から、調査協力の依頼がきます。

「あなたが以前に論文に書いていた、シルクロードトルファン遺跡で出土した鏡にそっくりの鏡が奈良にあるので見て欲しい」というのです。

2人で調査を始めると、さらに同じ鏡が広島にもあることが分かります。

鏡は聖徳太子の時代のモノらしい。

どうしてそんな時代にこんなに離れたところに同一の鏡が3つもあるのか…?この謎は奈良の「キトラ古墳の被葬者」という真実につながります。

これだけだと歴史マニアじゃないと楽しめないと思うじゃないですか?

でも、お話の本筋はこれだけじゃないんです!

主人公拉致から突然始まるスリル・ショック・サスペンス!

冒頭で、可敦さんが謎の男二人組に拉致されかけるんです。

この時、可敦さんを助け流のが、可敦さんと一緒にいた人物…つまり彼女に調査依頼をした大学教員なのですが「アトミック・ボックス」で主人公美汐さんの逃走の手助けをした1人、美汐さんの大学の同僚・三次郎くんです。

三次郎くんは「アトミック・ボックス」でうだつの上がらない野暮ったいキャラだったのですが、ここにきて大活躍するので読んでて「おおおお!」ってなります。

可敦さんのお兄さんは、中国で熱心な活動家で当局に目をつけられているらしく、自分が人質になることでお兄さんへの圧力になるそうなのです。

自分は活動には一切関与していないのだけど、今回の誘拐未遂が公になれば、最悪自分は中国に送還され、2度と日本で研究できなくなるかもしれない、なので警察には通報しないで欲しい、と可敦さんは言います。

その後三次郎くんは美汐さんを頼り、美汐さんは「アトミック・ボックス」の時に逃走を手伝ってもらった仲間や、当時敵対した公安の人たちに協力を依頼してみんなで可敦さんを助ける展開になるので、読んでて「おおおおおお!!」ってなるのです。

そこが面白いし熱いのです!!

自由に勉強できるって、ありがたいですね。

物語は拉致の黒幕から逃走しながら3つの鏡の謎を追う怒涛の展開になるのですが、読みながら考えたのは「自由に勉強できるありがたさ」です。

そういえば、紛争地の子供達に「将来の夢」を聞くと「勉強してお医者さんになりたい!」とか答えるエピソードがありますよね。

ただ好きな研究がしたいだけなのに、出身や政治的な問題で自由に動けない可敦さんの立場は、そういう話のメタファーにも読めるなって思いました。

自由に勉強できるってありがたいことですよね。なのに、何で勉強は楽しくないように思えるのでしょうね?

なんかそんなことしみじみ考えながら読み終わりました。

今日はちょっと長くなりましたが、お付き合いありがとうございました!

ちなみにアトミック・ボックスの記事はこちらです!

ritostyle.hatenablog.com