ファミコン・スーファミ世代に今年一番お薦めしたい小説「ナウ・ローディング」

こんにちは、りとです。

今日はとても素敵な物語を読んだのでご紹介です。

詠坂雄二さん著「ナウ・ローディング」 

ナウ・ローディング

ナウ・ローディング

 

 我々ゲーム好きにとってはお馴染みの単語がタイトルになっているくらい、ゲームにまつわるお話です。

以下あらすじ程度のネタバレを含みますのでお気をつけくださいね!

柵馬さんは10年のキャリアをもつゲーム業界のライターさんです。最近のゲームの進化をちょっと引いた目線で眺める一方、かと言ってレトロゲームを懐かしむような懐古厨になるのも…、みたいなモヤモヤを抱いて仕事がめっきり減ってたところに、母校の専門学校から講師の依頼がきて引き受けます。

ある日学校から10年前の学生が書いた「10年後の自分に向けてのタイムレター」の束が発見されます。

ちょうど学生だった頃の柵馬さんにその手紙の処分が任されるのですが…と、いうところから始まるのですが、このタイムレターを書かせた学校長の真意がニクいんです。

この件をきっかけに「また、歩きだそうかな。」なんて気持ちになった柵馬さんのもとに仕事の依頼が舞い込みます。

「ばらくうだ」というエロ漫画雑誌でゲームにまつわるコラムを自由に書いて欲しい、というものでした。

以後、物語は柵馬さんのコラム記事にまつわる短編の体裁をとります。

ここまでの、柵馬さんが主役の「もう1ターンだけ」以後の各編のあらすじは以下の通りです。

「悟りの書をめくっても」

スーファミドラクエⅢのRTA(ゲームのクリアタイムを競う遊びというか競技の事なんですね、初めて知りました)の走者(RTAをする人の事をこう呼ぶ)である万年青(ハンドルネーム)さんが主人公です。

ある日、彼女(本人は二十歳のお嬢様)が尊敬する走者のアカイライさんの不正が発覚します。アカイライさんはその後ネットの世界から失踪するのですが、どうも不正の仕方がおかしい。わざと不正のあとを残している、まるで不正を見つけて欲しいような?

…万年青さんはアカイライさんの真意にたどり着けるか?

「本作の登場人物はすべて」

「ばらくうだ」でエロ漫画を連載している漫画家の巡さんが主人公です。

ある日、先輩漫画家からとある同人ゲームをプレイするように言われます。そのゲームの絵は、かつて巡さんが尊敬していたものの、自主規制が厳しくなり引退を余儀なくされたエログロ漫画の大家、永遠恒久の絵に似ているのでした。

すごく似ている、でも永遠先生の真骨頂であるグロが一切ない…?

…このゲームを作ったのは永遠恒久なのか?

「すれちがう」

小学生のケンタは3DSで「どうぶつの森」をプレイしています。

ある日、ケンタはいつも友達と遊んでいる公園にずっといる1人の大人に気がつきます。彼の名前は「よみさか」。なぜわかったかというと、公園で遊んだ後、いつも3DSの広場に「よみさか」という名前のMiiがいるからです。

大人なのに、平日の昼間にずっと公園にいる「よみさか」は一体何者なのか…?

ぼくと同じ景色を見て現在に至る人にはグッと興味が沸く内容じゃないですか?

どの話にも共通するのが「停滞した現在」「未来の可能性」のように感じられました。

最後の話である「ナウ・ローディング」で柵馬さんは、コラムに「ゲーム内のナウ・ローディングは新しい世界がプレイヤーの前に開かれるために必要なもの」と書いています。

現状が停滞し暗くてしんどくても、その後必ず世界は開かれる!というのです。

なんか、すごく元気をもらえる本でした。

「ナウ・ローディング」は、直接はゲームの話ではないのですが、著者さんの別の本の主人公の話らしく、他の本も手に取る決意をするぼくでした。