こんにちは、りとです。
今日は逸木裕さん著の小説「虹を待つ彼女」を読み終えたので感想を書きます。
ぼくが続きが気になって仕方なくなった辺りまでの、核心に触れない程度のネタバレありますのでご注意ください。
自分がプレイしているゲームでドローンが動いて誰かを襲っていたら?という冒頭
お話は、水科晴という女性の自殺のシーンから始まります。
彼女はネットに自作のゲームを配布しているゲームクリエイターで、完成度の高い作品作りで沢山のファンを持つ人です。
そんな彼女がとった自殺の方法は「自分が制作した"渋谷に現れたゾンビをプレイヤーが協力して倒すガンシューティングのオンラインゲーム"とドローンを連動させ、モニタ越しにはゾンビに見える自分をプレイヤーに殺させる。」という劇場型の自殺でした…。
6年後の2020年、物語主人公の工藤賢は退屈な人生を送っていました。
彼は頭が良すぎました。
子供の頃から、どんなことでもあらかじめ予想を立てて行動できて、予想通りの結果を得られてしまったのです。
そんな彼は「人工知能が発達すれば自分にも予測できないような楽しいことが起きるのではないか?」と考え人工知能の研究者となったのですが、最近ではもう人工知能の未来もあらかた予測がでできてしまい、鬱々とした日々を送っていました。
ある日、所属している会社で「死んだ人間を人工知能で蘇らせる」というプロジェクトが始まり「プロトタイプは水科晴にしよう」という話が持ち上がります。
「少しは暇つぶしになるか…」と水科晴について調べ始める工藤でしたが、水科晴がなぜあんな自殺方法を選んだのか知った時、自分が水科晴に恋をしてしまったことに気づきます。そんな彼の元に「これ以上水科晴について嗅ぎ回るとお前も殺す」という脅迫メッセージが届きます。
生まれて初めて誰かを本気で好きになった工藤に迫る命の危険。
工藤は生きている実感を得るのでした。
無気力な天才が本気になったら何するかわからない面白さ
冒頭から「あ!これアニメ『PSYCHO-PASS』で見たことある展開だ!!」とドキドキしながら読んでしまいまいました。
また、工藤さんはプロの囲碁棋士と戦う囲碁ソフトや、人工知能の女の子と会話を楽しむアプリの制作もやっていて、晴をAIで蘇らせる以外にもいろんな問題に直面します。どれもこれもが「実際こういうことこれから起こるかもな…?」というような、近未来感のある展開が続きます。
工藤さんの姿は、マッドサイエンティストじみているものの、でもちゃんと周りに目を配って冷静に判断していくという微妙な天秤の上で行動を決めるので「先が読めない楽しさ」がありました。
その一方で「謎の死を遂げた美貌の天才ゲームクリエイター」の晴の姿も少しずつ明らかになっていきます。
同時に、ひたひたと迫り来る脅迫状の送り主の影…。
すごく面白かったです!
「AI」「ミステリ」「ラブストーリー」って単語にピンときたら、ぜひ手にとってみてください!