こんにちは、りとです。
今日紹介する小説『海を照らす光』は、ある意味お勧めできない小説です。
なぜって、……いかんっ!…内容思い出しただけで鳥肌立って目頭が熱くなる…フォオオ!!
ぼくは読み終えてから3日ほど余韻が収まりませんでした。こんな経験滅多にない…!
ぼくが「読むんじゃなかった!」と後悔しつつも、抜け出せなくなってしまったあたりまでのあらすじを書きますので、情報なしで読みたい方は今日はここまでにしておいてください。
メインキャラに悪者が誰もいないお話
物語は、第一次世界大戦直後のオーストラリアが舞台です。
主人公・トムは戦地で「英雄」と言われる活躍をしました。
しかし彼は、殺した相手や死んでいった仲間たち、そして戦争に行くことになった自分の生い立ちに悩み苦しみ、戦争中の出来事をずっと引きずっていました。
そして「今後は少しでも誰かの助けになろう」「正しい行いをしよう」「静かに生きていこう」と灯台守になることを決意します。
赴任した先はオーストラリアの西の端にある無人島「ヤヌス・ロック」の灯台でした。
ヤヌス・ロックへの船がでる港町で、トムは天真爛漫な少女イザベルと出会います。
イザベルは10歳年上の、憂いを帯びたミステリアスなトムに惹かれます。
トムもイザベルに癒されます。
そして2人は恋に落ちます。
しかしトムは「ヤヌス・ロックは誰もいない環境の厳しい島で、灯台守の仕事は辛い。君を不幸にしたくない。」と突き放すのですが、イザベルは「あなたと一緒ならそれだけで幸せなの!」と猛烈にアピールしてきます。
イザベルの熱意にほだされ、2人は結婚します。
灯台での2人だけの生活が始まります。
とにかく登場人物の描写が繊細
トムの苦しみとイザベルの性格、イザベルと出会ってからのトムの救われよう、そして2人の幸せな新婚生活からのイザベルの妊娠…これら全てがものすごく丁寧に描かれていて、こちらも読み進めながらニヤニヤせずにはいられない展開なんですね。
しかし、これがあとで楔になるんです。
イザベルが流産するんです。
しかも3回も。
このシーンが本当に読んでて悲しい…詳しく書こうかと思いましたが、やめます。
3回目の流産の直後、転機が訪れます。
島にボートが流れ着くんです。
ボートに乗っていたのは、死んだ男と、生まれたばかりの赤ん坊と、女性用のカーディガン。
イザベルは「この子を私たちの子にしましょう!」と言い出します。
トムは「灯台守として、この島で起きたこと全てを正しく記録しなければならない。そしてこの子を探している母親がいるかもしれない。」と言います。
しかし「カーディガンだけがあるなんて、きっと母親は海に落ちたのよ!このまま孤児院に行くより、私たちに育てられた方がこの子も幸せよ!」とイザベルに反発されます。
口論になる2人。
最後はトムが折れ、女の子の赤ちゃんに「ルーシー」と名付け、3人目の赤ちゃんが無事産まれたことにしました。
この後の展開は、多分みなさんが予想された通りの展開になります。
ごく当たり前の「仲のいい夫婦と小さな子供の3人だけの静かで幸せな生活」という仮面の裏で「いつも正しくあろう」と願ったトムの心が蝕まれていきます。
そして2年後、久々の休暇で家族で本土に渡ったトム一家は、そこで「2年前にボートで海に出て行ったきり帰ってこない夫と赤ん坊を今も生きてると信じて探し続けている女性」のことを知ります。
それからさらに2年後…物語が大きく動きます!
重い!重すぎる!!
ルーシーの本当の母親・ハナも本当にいい人なんです。そしてボートで死んでいたハナの旦那さんも素晴らしい人でした。だから、ハナのところにルーシーは帰らないといけないんです。
でも、戦争で2人の兄を亡くし「両親のために自分が命をつながなければ」と思いながらも3度も流産したイザベルにとってルーシーがどれほどかけがえのないものかも想像できます。
そして、愛情をめいっぱい注いでもらった4歳のルーシー(本当の名前はグレース)の立ち振る舞いが、泣かせるんです…!4歳ってのがずるい!
ダメや…この本、ほんまダメや…!不幸になった方がいいキャラが見当たらない…!!!
家族のありがたみを噛みしめました
あえて挙げれば、この物語で「悪」なのは戦争です。しかし、戦争があったから、イザベルもハナも最愛の夫と巡り合っているのです。そう考えると戦争の業の深さを考えてしまいます。
そして読み終わって、戦争のない時代に生まれたことと、どんなに腹が立とうが子どもがいて、元気に育ってることを感謝せねばならぬと心から思いました。