【読書感想】『盤上の向日葵』鬱な気分になりながらも続きが気になって仕方がない展開

こんにちは、りとでやんす。

今日は柚月裕子さん著の小説『盤上の向日葵』を読み終わったので、感想を書きます。

あらすじとぼくの感じた魅力を紹介する程度のネタバレがありますのでお気をつけください。

盤上の向日葵

盤上の向日葵

 

最近話題の将棋がテーマのミステリーでした

物語冒頭の舞台は、平成6年の山形県天童市です。

ここで、 東大卒業後20代で起業したIT企業で「時代の寵児」となりながらも突然の会社辞任、特例でプロ入りを目指す天才棋士 「上条圭介」が「あと一勝で奨励会を経ないプロ誕生」という、世間が注目する一戦が行われます。

そんな街をあげての大にぎわいの中、2人の刑事が会場に向かいます。

1人は、口が悪くおかしいと思ったら上司に対しても平気で口ごたえをするたたき上げ敏腕ベテラン刑事「石破」、もう1人は、かつてプロ棋士を目指しながらも年齢制限で奨励会を去りその後刑事となった新米「佐野」です。

2人はある事件を追ってこの会場にやってきます。

4ヶ月前に埼玉県の山中で白骨遺体が発見されます。遺体は、将棋ファンなら垂涎ものの名駒で、売れば600万にもなる「初代菊水月作の駒」と一緒に埋められていました。

この駒から上条圭介が事件の重要参考人であることが判明し、この会場を訪れたのでした。

…というのが冒頭です。

駒と圭介と遺体の接点の謎

その後、物語は「どん底の幼少期を送った上条圭介が唯一生きる支えだった将棋から様々な出会いを経験し成長していく話」と「将棋を諦めた新米刑事の佐野が、埼玉で発見された白骨遺体事件を、荒くれ者の石破と犯人を追う話」が交互に展開されます。

圭介パートは、母親との死別、飲んだくれの父親からのネグレクトと虐待、師と呼べる恩人との出会いと、そこからの人生の立て直し…と涙なしには読めない展開が続きます。

佐野パートは、将棋と縁を切って刑事になったのに、将棋絡みの事件を追うことになった新米が「問題アリ」の上司とバディを組んで難事件に挑む、というミステリーものの美味しいとこフルコースみたいなお話です。

2人の刑事は圭介に任意同行か逮捕かわかりませんがとにかく捕まえに行ってることはわかってますよね。

しかし「初代菊水月と圭介と白骨遺体がどう繋がるのか」「こんなに健気に一生懸命生きてきた圭介が…?」という2つの謎の見せ方がものすごく上手くて、続きが気になって仕方がない展開を見せるんです。

初代菊水月が圭介の手に渡ったシーンとか、個人的に感動すぎて大変でした。

と同時に「なんでこんな圭介がその後遺体に絡むことになるの?」とまた続きが気になりました。

圭介パートは「人生の分岐」で思わず「なんでそっち選んじゃうの!?」と声あげちゃうようなシーンが何度かあります。しかし「そっち」を選ぶことしか考えられない、圭介のそれまでのを知っているので切ないやら悲しいやら…。もう鬱です…!

佐野パートでは、凸凹コンビが細い糸を手繰るようにして少しずつ事件の真相に迫っていく様が痛快です。しかし「でもその先にいるのは大人になった圭介なんでしょ!?」と思うとハラハラで…。もう鬱です。

「そう締めるか!」なラスト

ネタバレになっては面白くないので、詳しくは語りませんが「そう来たかっ!!」なラストでした。

ぼくはちょっとモヤモヤですが、読んでる最中は夢中で読み進めました。

白熱の将棋シーンもありますが、3月のライオンみたいに将棋知らなくても「白熱感」は味わえますので、ミステリ好きにはぜひオススメしたいです!