今日は押見修造さんの漫画『ぼくは麻理のなか』の話をしようと思います。
主に感想と、未読の方へのオススメのつもりで書きます。
ネタバレはしないつもりですが、あらすじ紹介程度のお話はしますのでお気をつけくださいね。
序盤にメンタルをやられそうになる
押見修造さんと言えば、「クソムシが」の作家さんって言えば「あーあの人ね!」ってなる方が多いと思うんです。
押見作品ってすごく面白いのですが、ぼくは完結してから読むようにしています。
なぜかというと押見さんの作品って序盤の物語導入の「絶体絶命感」が本当にやばいんですよね…。
この漫画もの主人公の「小森功」君は、コミュ障でうまく友達が作れなかったせいで引き篭もりになってしまった大学生で、唯一の楽しみが、行きつけのコンビニでよく見かける可愛い女子高生を尾行することっていうどうしたらいいかわからない感じです。
そんな彼がいつも通り、いつもの彼女をコンビニから尾行していると、女の子がこちらを振り返り「ニコッ」と微笑みかけてきたかと思うと気を失い、気がついたらその女子高生「麻理」に自分がなっていた、というお話です。
しかし『君の名は。』みたいな展開にはならない
どうして良いかわからず、巧くんはひとまず麻理さんのふりをすることにします。麻理さんはクラスでもいわゆる「イケてる」グループに属していて、コミュ障の引き篭もりだった巧くんは冒頭から絶体絶命です。
しかし「自分が麻理さんになってるということは、麻理さんは自分になってるのでは?」と思い、アパートを訪れてみると、自分は自分のままそこに存在しているし「コンビニから女子高生を尾行したことなんてない」って言われるしでさらに混乱します。
クラスメイトはみんな「今日どうかした?」くらいの反応しかない中、「お前は麻理じゃない!」って気づいたのが、クラスであまり目立たない地味目の女の子「依」さんでした。
依さんに「お前は誰だ!?」とまくしたてられ、仕方なく事情を説明する巧くん。
「お前なんかが麻理の中に入るな!!」とすごい剣幕で罵られながらも、どこに行ってしまったかわからない麻理さんを探すために二人で協力することになるのでした。
ミスリードがうますぎる
ネタバレしないように書きますが、この作品は本当にミスリードが上手いんです。
「あー!騙されたぁー!!」が本当に気持ちのいい物語です。
と同時に、押見節全開の人間の裏側のドロドロしたところの描写も見ものです。
「クラスでイケてるいい子の麻理さん」が抱える「闇」の描き方がすごいです。
いつも最後に救いがある、だから完結してから読む。
壮大なネタバレになってしまっては申し訳ないのですが、押見作品って最後は一応「救い」があるんですよね。なので、そういった点では完結して最終巻までが手元にあると安心して読めるんです。
この物語も、最後は「なるほどぉー」って終われます。
またラストを知った上でもう一回最初から読むと「これはあれかー」みたいな発見もあって楽しいです。
大ゴマが多くて『ONE PIECE』の単行本だと1冊読むのに1時間かかる遅読のぼくが、この作品は1冊15分くらいで読めます。
未読の方は秋の夜長に一気読みされてみてはいかがでしょうか?