【読書感想】『百貨の魔法』読後に幸福感が全身を包んでくれる物語

今日は「最近幸せ感じないなー」って方にぜひ読んでいただきたい小説をご紹介しようと思います。

あ、幸せでも読んでほしいです。

なんて言うんでしょう?ちょっとジブリっぽいです。

村上早紀さん著の『百貨の魔法』という本です。

百貨の魔法

百貨の魔法

 

経営の苦しい地域密着型の百貨店が舞台 

ネタバレにならない程度のあらすじ紹介をしますね。

物語の舞台は「星野百貨店」という創立50年を迎えるデパートなんです。

この店は創業者である「星野誠一」氏が戦後の焼け野原に「地域の人たちが2度と飢えないように」「ここが文化の発信地となれるように」と作り上げた店です。

この経営理念はずっと守られ続け、お客様も従業員(⇦ここ大事)が幸せでいられることを最優先に経営してきました。

時代を経て、郊外に大型ショッピングモールが進出し、ネット通販の波が押し寄せ、震災を経験し消費が冷え込んだ現代日本の各地にある地域密着型百貨店がどこもそうであるように経営が苦しくなっても、創業の理念は守られ続け、地域住民には愛され、従業員たちがリストラされたりすることもありません。

しかし、その姿勢がさらに経営を圧迫していて、さすがに最近は「星野百貨店ももうすぐ潰れるのではないか?」と噂されてるんです。

さて、この百貨店には不思議な言い伝えがあります。

それは「吹き抜けのステンドグラスに描かれた白い猫は、たまに抜け出して散歩をする。その白猫に出会った人は願いを1つだけ叶えてもらえる。」というものです。

皆に愛されればこその幸せな言い伝えです。

そんな星野百貨店に、新たに「コンシェルジュ」というポストが作られることになりました。

採用されたのは「芹沢結子」さんという女性でした。

彼女はすぐに百貨店に馴染みました。柔らかな笑顔と物腰でみんなに溶け込むのですが、どこかミステリアスなところがあり、従業員たちの中には「昔から知ってる気がする」という声が上がったりもします。

さらに、彼女がいつ出社し退社してるのか誰も知らないのでした。

百貨店を愛する従業員たちと白猫と芹沢結子さん

物語は、エレベーターガール、靴屋の女店長、装飾品売り場のフロアマネージャー…と、星野百貨店に務めるいろんな人に視点を変えながら進んでいくんです。

それぞれの人に、その人自身の歴史があって、星野百貨店との思い出があって、みんな星野百貨店が好きなのです。

そんな彼ら彼女らが、それぞれコンシェルジュの芹沢結子さんと関わり、願いを叶える白猫に思いをはせるエピソードが綴られていくオムニバスストーリーです。

結子さんは何者なのか?

不思議な白猫は本当にいるのか?

星野百貨店は大丈夫なのか?

ページをめくるごとに幸福感が増していく

この物語は、『半沢直樹』シリーズや『海賊と呼ばれた男』のような「経営もの」ではないんですね。

「起きてもおかしくないな」くらいの「素敵な偶然」が重なっていく物語なんです。

しかし「偶然」とは思えないくらいに偶然が重なるので「魔法」と呼んだ方が良いかもしれない。

この絶妙さがすごくいいのです。

「偶然」起こった嬉しい出来事って、すごく幸せな気持ちになって「ひょっとして神様いるかもね」みたいな気分になるじゃないですか。

あれを連発されたら、もう幸福な気持ちで本を読んでいくしかないのです。

ただ「偶然」を連発されるだけならシラけるかもですが、この物語の主人公たちは、みんな幸運が舞い降りてもいいくらいみんな努力してる人たちなんですね。なので「少しくらい偶然が重なっても良いじゃん」って思えるんです。

素直に人の幸せを望めるっていいな

繰り返しになりますが、冷静に読めば「そんな偶然何度も繰り返し起こるか!」って物語です。

でも、「あぁおれって、一生懸命な人は人は幸せになってもらいたいなーって素直に思える心があったんだ」と思わせてくれる、そんなお話です。

そんなピュアな気持ちを思い出すために「百貨の魔法」いかがでしょう?

ぼくはこの本で何度泣きそうになったことか(というピュアハートアピール)