前回、『ゲームの王国』というすごい小説を読んだ話をしたのですが、すごすぎて上巻の話で終わってしまいました。
しかし、もうちょっと語りたいので今日は下巻の話と感想を書きます。
核心部分のネタバレはありませんが、あらすじ程度は語ってしまいますのでお気をつけください。
- 作者: 小川哲,mieze
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/08/24
- メディア: 単行本
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突然SFになる
詳しくは前回書いたので、サクッとだけ上巻のあらすじを振り返りますと、ポル・ポト政権時代のカンボジアを舞台に、「ソリヤ」というポル・ポトの隠し子で、人の嘘を見抜くことのできる女の子と、「ムイタック」というあだ名の超天才の男の子が偶然出会ってカードゲームで対戦し「今までにないほど楽しい時間」を過ごして互いに惹かれ合うんだけどポル・ポトの革命のせいで離れ離れになってしまい、数年後に最悪のかたちで再会をしてしまう、というのが上巻のラストです。
下巻は「あの最悪の再会から50年後」から始まります。
2023年、つまり近未来の話になってるんですよ。
もうちょっと語っていいですか?
2023年、ソリヤは民主化を果たしたカンボジアで政治家となり、国政のトップを目指しています。
ムイタックは、大学で脳科学の研究者となり、プレイヤーが魔法使いになって「自身の楽しかった思い出」を魔力に変換して戦うソード・アート・オンラインの世界みたいなフルダイブのオンライン対戦ゲームの開発をしています。
2人は、今ぼくらが使ってるものより、もうちょっと発達したスマホやネットの普及した社会を生きてるんです。
原動力は同じなのに…!
「あれから50年」の生き方が、2人とも「カードゲームで対戦した思い出」に起因してるんです。
しかし、ソリヤは「ゲームのようにルールが守られる現実世界」を目指し、ムイタックは「現実と違いルールがちゃんと守られるバーチャル世界」を完成させるんです。
この、すれ違いというか、道の交差しない感…切ない!!
2人は最悪の再会のあと決別し、その後1度も会っていません。
果たして、少年少女だった2人が願った「もう1回やろう!」が叶う瞬間は来るのでしょうか!?
凄惨な歴史の見事な「下敷き」扱いに痺れた…!
下巻を読んでると、ソリヤとムイタックの関係はまるでロミオとジュリエットのように思えてきました。
これは実際に当時を経験された方には大変失礼な言い草なのですが、ポル・ポト時代もクメール・ルージュも、そしてこれらのせいで死んでしまった人たちも全て「2人を隔てる障害」に見事に落とし込まれているように感じるんです。
また、カンボジアは「現実世界を舞台にしながら、SFのようなサバイバル時代と近未来ファンタジー世界」を描くには最高の舞台のようにも思えます。
2人が青春時代を送るポル・ポト政権下のエピソードは、ぼくが産まれる数年前という近現代にも関わらず、まるで「異星人に侵略され全人類が奴隷化された世界」を描いたSF小説でも読んでいるかのようでした。
そんな2人が50年かかるといえ、今より発達したテクノロジーの存在する未来を舞台にした「その後」を生きるんです。
すごい仕掛けだなって思いました。
そして何より、カンボジアの悲しい歴史を知るきっかけは「とある男女にとっての障害」くらいの重さがちょうど良いのかもしれません。
そんなことを思いながら「すごい小説だなこれは!」と感じたぼくでした。