今日は佐伯泰英さん著の小説『居眠り磐音 陽炎ノ辻 決定版』を読んだので感想を書こうと思います。
この小説、不勉強で今回初めて知ったのですが、51巻(と外伝1巻)まで出ている長編人気作品なのだそうです。
それがこの度、松坂桃李くん主演で映画化されたとのことで、本屋で「決定版」を積んでるのをみて「そんなに面白いのか〜」手に取った次第なんです。
確かに面白い…これは燃える設定です!
以下、あらすじ紹介程度のネタバレがありますのでお気をつけください。
江戸時代のお話です。
主人公の「坂崎磐音」は豊後関前藩士で、親友の「河出慎之輔」と「小林琴平」の3人で江戸の神伝一刀流の道場で3年の修行を終えた帰路で、「これからそれぞれの家を継いで3人で豊後関前藩を盛り上げていこう!」と語り合ってるとことろから物語が始まります。
慎之輔は、超真面目な性格で剣も型通り、ちょっと朴念仁なイメージ。
対照的に琴平は、ハデ好きで遊び人風なところがあり、剣も猛々しいイメージ。
磐音は争いごとを好まない穏やかな性格で、剣も自分から攻めて行くタイプではありません。
稽古中もいつも2人の剣を柔らかくいなして引き分けに持ち込み、師匠には「まるで居眠りしているかのような剣だ」と言われる、底の見えなさがありました。
琴平には、2人の妹がいます。
上の妹である「舞」は慎之輔の妻として、すでに河出家に嫁に行っています。
下の妹である「奈緒」は磐音と婚約していて、帰ったら祝言を挙げることになっています。
磐音にも「伊代」という妹がいて、琴平は「伊代を嫁にくれ」なんて言ったりして、この6人は昔から顔なじみなのです。
とても和やかで希望に満ち溢れたオープニング。しかし…
磐音たちが豊後関前藩に帰ってそれぞれの家の帰路に着いたとき、慎之輔が、妻である舞が「夫が不在の3年の間に不貞を働いていた」という噂が広まっていることを知ります。
これに逆上した慎之輔が問答無用で舞を斬り殺してしまうのです。
妹を斬り殺された琴平は大いに怒ります。
そして決闘の末、琴平が慎之輔を殺してしまいます。
その知らせを受けた磐音は、藩主からこの事件を収めるよう言われます。
説得に応じない琴平は磐音とも決闘を繰り広げ、初めて見せる磐音の本気の剣に斬り伏せられてしまいます。
突然2人の友を失った磐音は、そのショックから脱藩。
「兄を斬ったのに奈緒を貰うわけにはいかない」と婚約も反故にし、浪人となって江戸に流れるのでした…。
影のあるヒーローが下町で活躍するお話
冒頭、散々3人の熱い友情を見せつけられたのに、一瞬でその3人が殺し合う展開になるので面食らってしまいます。
正直、慎之輔が「舞の不貞の噂を耳にする」から「舞を斬る」までの展開が早すぎてついていけない感もあったのですが、これも「武士の矜持」ってやつなんですかね?
そう考えると、磐音が「武士」を嫌になって浪人になるのもちょっと頷けたりもしました。
物語は「磐音が浪人になって江戸に流れる」までがオープニングです。
そして、江戸で長屋暮らしを始めた磐音は「金兵衛」という気のいい大家に仕事を紹介してもらいます。
この物語のメインストーリーは、心優しい磐音が長屋や仕事先で慎ましく生きる市井の人々と交流を深めていき、彼らに降りかかる暴力をここぞとばかりに発揮される「居眠り磐音」の異名をとる剣で救っていくヒーロー物なんですよ。
つまり仮面ライダーとか、るろうに剣心とか、スパイダーマンとかと同じ「弱者を助ける、心に影を抱えた下町のヒーロー」って構図なんですよね。
どうしてこんなにも惹かれるんでしょう?
「強いだけではなく、どこか弱さを持ってる主人公」って、ヒーローになれないぼくらにとってはパーフェクト超人より親しみを感じやすいのかもしれないですね。
磐音の、笑顔の裏に隠された哀愁にどうしようもなく惹かれてしまいます。
この「陽炎ノ辻」では、江戸の通貨が統一化されることによって起きる、ある両替屋の騒動を磐音が納める話で終わりますが、磐音の浪人生活はまだ始まったばかりです。
心の底から磐音が笑える日はやってくるのか?
続きもゆっくり読んでいきたいなあって思いました。