ネットで見ると賛否両論みたいですが「ミステリ好き」よりは「小説好き」な、りと視点からすると極上なエンタメミステリーに思えた小説『魔眼の匣の殺人』を読み終えたので感想を書こうと思います。
よろしければお付き合いください!
大福理論だった前作
美味しいものと美味しいものを掛け合わせてもっと美味しいものになる「大福理論」を使って「若者が山奥の山荘に集まったら起こるハプニング」の王道2つを掛け合わせてめっちゃハマらせてくれた『屍人荘の殺人』の続編に当たる物語です。
こちらの小説の感想も以前感想書いたのですが、一言で言えば「すぐ続編読みたい!」だったんですね。
今度はどんな仕掛けなのだろうとワクワクして本を開いたのですが、今回は王道の「全部乗せ」 みたいなお話でした!
以下、あらすじ紹介程度のネタバレがありますのでお気をつけください。
予言者のいる村
大学でミステリ研究会に所属している「葉村譲」くんが、同じ大学で学生ながら警察と一緒に実際の事件を解決している美少女「剣崎比留子」さんに連れられて行った演劇部の合宿先で、とある事件に巻き込まれる話が前作だったのですが、今作は「前作の事件の真犯人(と言うか組織)」について2人が調べを進めているところから始まります。
2人は件の事件を「予言」していた老女がいた事を知るんです。
その老女は山奥の村のとある施設でひっそりと暮らしているようです。
その老女から詳しい話を聞くため山村に赴く2人。
しかし、不思議なことに村には人影が無いのです。
不審に思いながら村を回るなかで、立ち往生してしまった親子や、訳ありの高校生二人組など、いろんな経緯で「たまたま同じ日にこの村に立ち入ってしまった人々」と知り合います。
その中にいた「もと村の住人」の女性に連れられ「あの人なら何か知ってるだろう」と、2人の当初の目的でもあった予言の老女「サキミ様」の元に案内してもらいます。
サキミ様の元に連れられた一行は、彼女から「この村でこの2日の間に男女2人ずつ、4人死ぬ。」という予言を聞かされます。
ここで、村の住人がいなくなった理由も明かされます。
予言を恐れ、2日間村を離れていると言うのです。
「バカげたことを」「サキミ様の予言は絶対です」などと話をしていた矢先、サキミ様のいる施設と村を繋いでいた橋が燃え落ちてしまいます。
携帯電話の電波も通じず、葉村くんたちは完全に閉じ込められてしまいました。
最初の犠牲者が衝撃
こんな感じで始まる物語なのですが、びっくりするのが最初の犠牲者の死に方です。
「え!?これって殺人なの??」って思わされるんです。
これはもう「呪い」とかそんなのの類なのでは?
この時点で、読む側はサキミ様の予言とともに「物語の世界には超常現象があるんじゃないか?」と思わされるんです。
そして続く犠牲者。
次は「殺人」なのか「呪い」なのか?
犯人は?
トリックは?
この混乱にズブズブとはまって行くのが楽しくて仕方ない物語なんです!
読みやすい文体とデレる比留子さん
呪いの村に閉じ込められて、次々人が死んで行く。
ある種「ベタ」ですよね。
そんな物語が、ラノベのようでラノベほどは軽くない軽妙な文体で書かれていて、しかもヒロインの比留子さんがやたら葉村くんにデレるんです!
どういうわけか、比留子さんは葉村くんを必要としている。
しかし葉村くんは「自分は比留子さんにはまだ不釣りあいだ」と躱している。
そんなボーイミーツガールなラブコメ要素もあるわけなんです。
まるで、ラーメンでいうところの「トッピング全部乗せ」のような小説です。
なので逆に「醤油ラーメンで店主の真骨頂を楽しみたい」と思うようなツウの本格ミステリーが好きな方にはちょっと物足りないかもしれません。
でも、ぼくみたいな、小説に限らずいろんなものを広く浅く摂取するのが好きな人はたまらないんですよ。
「ミステリー読んでみたいけど、本格的なのは難しくてちょっと手が出にくいなあ〜」って方がいらっしゃったら、強くオススメしたい小説です。
サキミ様の真相と次回への期待
ラストでサキミ様の正体が明かされます。
ぼくは、かなり衝撃でした。
そして、前回と今回の事件の関連と、次回作への「引き」と言うか「期待」の持たせ方の上手さにまんまとやられてしまいました。
早く続きが読みたくて、ウズウズしているぼくです。