【読書感想】『地球星人』一気読み必至の衝撃作でした

あー…またヤバい小説を読んじゃいましたよ…。

村田沙耶香さん著の小説『地球星人』なんですけどね、今日はこの小説の感想を書こうと思います。

地球星人

地球星人

 

『コンビニ人間』で騒然となった作家さんの新作はまたしてもすごかったっす。

メディアなどで「主人公がサイコパス」って捉え方をされることも少なくなかったかなー、と感じた『コンビニ人間』ですが、ぼくにはサイコパスってのはしっくりこなくて、うまく社会に適応できない主人公が自分なりに努力するんだけどそれでもやっぱり世間とズレてて「危ない人」扱いされるお話に思えて、読んでてザワザワしっぱなしのすごい作品でした。

ぼくも感想書きました。

rito.gameha.com

そんな村田さんの新作ですが『コンビニ人間』の読後の余韻がすごかったので「心に余裕があるときに読もう」と思って積んでたんですよ。

…うん積んでてよかった。

そんなお話なんです。

以下、あらすじをぼくがページをめくる手が止まらなくなったあたりまで紹介しますのでお気をつけください。

主人公は魔法少女

物語は「奈月」ちゃんという小学5年生の女の子の一人称で語られていきます。

彼女は自分のことを「魔法少女」だと思っています。

奈月ちゃんを魔法少女にしたのはお年玉で買った「ピュート」というぬいぐるみです。

そのピュートが突然喋り出し「自分はポハピピンポボピア星から地球の危機を知らせにやってきた宇宙人で、地球を守るために魔法少女になって戦ってほしい」と言われ変身道具を渡されたというのです。

この小説は、奈月ちゃんのこんな自分語りから始まります。

「ちょっとイタい子なのかな?」って思うじゃないですか。

でも、そうじゃないことがすぐわかるんです。

奈月ちゃんは両親と姉の4人家族です。

お父さんはあまり子どもに興味がなさそうです。

お母さんはちょっとヒステリックで、姉も母さんの気性を受け継いでるみたいで、2人はなんだかツーカーの仲みたいで、お母さんはお姉ちゃんのことばかり贔屓します。

そして2人で奈月ちゃんのことを「ドンくさいみそっかす」と見下しています。

家族に愛されていないがために、自分を守る為に作った「設定」が「魔法少女」なんですよ。

そんな奈月ちゃんですが、実は恋人がいます。

いとこの「由宇」君です。

由宇くんの家庭も少し複雑なようで、他の子には感じられないくらいの「気が合う」という感情を、知っている言葉の「恋人」に当てはめているような、そんな仲です。

2人は自分たちだけで秘密の「けっこん」をしますが、普段暮らしている場所は遠く、年に1度お盆の時にだけ会う事ができます。

盆が終わると2人は「何があっても生き延びること」と約束を交わし、翌年また会えることを生きがいにそれぞれの生活に戻っていきます。

奈月ちゃんは他にもちょっとズレた価値観を持っていて、自分たちが住んでいる街が「工場」に見えています。

同じような作りの家やマンションは「箱」です。

地球人のオスとメスが、つがいにされて箱に入れられ、新しい命を「生産」する。

「大人になる」ということは「工場の部品になる」ことなのだと感じています。

工場の部品として未成熟な自分は大人にキツくあたられても仕方ないし、部品としての役割を果たしているお母さんは立派で、日々溜まるストレスを自分に向けてくるのも仕方ないと思っています。

6年生になった奈月ちゃんは、相変わらずの日々を送るのですが、お母さんのヒステリーが激化し、ついに虐待を受けるようになります。

また、以前から妙に体を触ってきていた塾の伊賀崎先生が、性的ないたずらをするようになってきます。

奈月ちゃんは、お母さんにスリッパで叩かれたり、伊賀崎先生に「口を壊され」ても「魔法、魔法、魔法を使わなくては…」と心の中で繰り返し「何があっても生き延びること」という由宇くんとの約束を必死に守ります。

そんな精神的にギリギリの状態の時に由宇くんと再開した奈月ちゃんは、由宇くんと共に「事件」を起こします。

「読んでて辛い…もう読むのやめようか」と思った矢先

この「事件」のせいで奈月ちゃんは完全に「詰む」のですが、その直後、物語は突然20数年後に飛び、30代になった奈月さんが「智臣」さんという男性と結婚して、穏やかに暮らしている様子が描かれます。

え!?

一体どうなったの!?

と、混乱させられます。

しかし、ここからが面白いんです。

ここから物語は、大人になった奈月さんと、夫の智臣さん、そして再開した由宇くんの3人の「地球人」に対する反逆の物語になるんです。

3人の行動は「結婚し家庭を築くことが人生の幸せなのだ」という「空気」や「常識」、「同調圧力」に対する戦争なんじゃないかとぼくには思えました。

そして、ものすごい余韻を残して終わる衝撃のラスト

このお話マジでヤバいです!

ぼくは普段ブログで本の感想書くとき、さらっとあらすじ紹介したら、あとはぼくがその本読んで感じた四方山話をだらだら書きなぐって終わるスタイルを取っていますが、この本に関してはあちこちに想いが散らかりすぎて、とてもうまくまとめられそうにありません。

いつも1記事30分くらいで書き上げるのですが、今日ここまでで既に1時間を超えています。

というわけで、今日はこのまま閉めようと思います。

気になった方、話は重ためですが実はめっちゃ読みやすい文体で、読み終わるまで時間のかからない小説なので、ぜひ読んでみてください。

そしてよければ感想を聞かせてください。

※「サイコパス」についてぼくは完全に素人で、本で読んだりした程度の知識しかありません。何か失礼な書き方をしていたら申し訳ありません。