地方に住んでて思う「地方創生」の夢と現実【読書感想】

今日は米澤穂信さん著の小説『Iの悲劇』を読んで思ったことを、感想を踏まえながら書いてみようと思います。

あらすじ紹介程度のネタバレがありますのでお気をつけくださいね。

Iの悲劇

Iの悲劇

 

タイトルの「I」とはIターンのことなんですよ。

物語の舞台は、住人が誰もいなくなった村「簑石」です。

簑石を擁する「南はかま市」の市長選で、簑石を復興することを旗印に票を集めた現市長は、公約を実現するため「蘇り課」を創設します。

蘇り課に配属された、主人公である「万願寺邦和」さんは、学生気分の抜けない新人の「観山遊香」さんと、「いかに仕事の手を抜き5時に帰るか」に全力を捧げる上司、「西野課長」の3人で、簑石Iターンプロジェクトに応募して集まった移住希望者たちの生活をサポートすることになります。

しかし、この集まってきた住人たちが曲者揃いで、次々と事件が起こります。

出世の欲を心に秘めた万願寺さんは、このプロジェクトを無事成功させることができるでしょうか!?

と言うお話なんですね。

で、面白いのが集まってきた移住希望者の曲者たちなんです。

「地方創生」「地域復興」「スローライフ」「スローフード」「モノ消費よりコト消費」「ロハス」「ワークライフバランス」などなど、Iターンってこういう言葉と相性がいいじゃないですか。

そして、こういう言葉は時折、甘美な響きを伴っちゃったりして、幻想的な夢の暮らしを想像させてくれますよね。

当然、地方暮らしにはそういう良いところがあるんです。

でも、それだけじゃないじゃないっすか。

簑石に集まってきた人たちは、その「だけじゃない部分」に目をつぶって集まってきてるんです。

そんな人たちの巻き起こす珍騒動を、なんとかするために奔走する「ザ・公務員」な万願寺さん。

これはもう、悲劇であって喜劇です。

ぼくも地方に住んでいて、自分の住んでる県の人口グラフとか見てみると、県庁所在地はギリで横ばいなのですが、ちょっと周辺に行くともぉ、谷みたいな勢いで右肩下がりなんです。

Iターンって、聞こえはいいし、ぼくも「実現したらいいな」と思ってるんですが、相当手強い案件だというのは、五感で実感する勢いです。

ちょっと前に「地方消滅」って本が話題になったじゃないですか。

ぼくも読んだんですが「日本沈没」みたいなファンタジーとは違うなって思ったんですよ。

地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書)
 

小説のラストでは、ある事実が明かされるのですが、それは「今の地方行政が抱えてる大きなジレンマにどう対応したらいいか?」 という問いが突きつけられてて、その1つの回答例みたいになってるんです。

この回答例は模範解答じゃない気がします。

でも、goodでもbudでもないけど現状を踏まえるとbetterなのかもしれない。

そう思えて来るのが、実は1番の「悲劇」なのかもしれない。

そんなことを考えたりした次第です。