美術史に文人画ってジャンルがあるんですね。
もともとは中国の、学者さんに相当する人たちが趣味で描いてた、職業画家ではない人たちが描いた作品のことを言うのですが、なんかいい感じに抜けがあるっていうか、「ああ、この人たち心から絵を描くことを楽しんでたんだろうなぁ」って作品が多いなぁって思うんです。
日本に入ってきた文人画の系譜の中に属する(とぼくは思っている)絵師の中で、ぼくが特に好きなのが浦上玉堂って人なんです。
この人は大のお酒好きで、ベロンベロンに酔っ払って歌を歌ったり楽器を奏でたり、そんな酒の席で即興で描いた絵もたくさんあったりするんですよ。
もぉね、上手い下手じゃなくて、ひたすらに楽しそうなんですよ、絵が。
飲みの席で「これから何も見ずにドラえもんを描いてみよう!」ってやって誰が1番上手く描けるか?みたいな、あーいう楽しさを感じるんですよね。
絵じゃないんですが、円空っていう仏師さんがいて、この人はすごく素朴な仏様を彫ってたんですが、いまのゆるキャラに通じるものがあるなぁ、なんて思ったりします。
円空さんは、日本の各地を転々としながら、旅先で出会った人たちのために親しみやすい仏様をサクサクっと彫ってらしたんだろうなぁって思うんです。
ぼくはサラリーマンをしながら余暇というか、人生の隙間時間に絵を描く日曜絵師です。
文人画みたいな、ぼくだけの楽しさ、みたいなのが絵に載せられたらいいなぁって思いながら絵を描きたいんですよね。
ところが美術展に作品を応募しようとすると、「出品料」なるお金が必要になったりします。
これが曲者で、うっかり打算というか、煩悩が出てしまってついつい出品料に見合う評価が欲しくなっちゃうんです。
元取りたいって気持ちです。
そのせいで「うまく描かなきゃ」みたいな思いが先走って、なんだか今一歩突き抜けなくて、ぼくの憧れる文人画的表現になんて全然到達しなくて、わかってるんだけどこの悶々とした心の行ったり来たりが整理しきれずにいます。
難しいなぁって思います。
そーいう意味では、ブログに添えてるイラストは完全に文人画然としているかもしれません。
何かのコンテストに応募することも、仕事としてお金をもらうこともなく、好きなものを好きなように描いてます。描いて喜ばれるものを「褒めてもらえるの嬉しいなぁ」って思いながら描いてるって方がしっくりくるかもしれません。
肩の力なんが、ダルンダルンに抜けてます。
ネットに上げてるってのも良いですね。
全国の方が見てくださるので、ぼくの代わりにイラストだけが全国を旅してるようにも思えます。
全国の皆さんが今日も日常をブログで綴って下さってるので、旅先の峠茶屋で会話しているようでもあります。
そしてぼくの書斎エリアは、旅するための未来の乗り物のコックピットみたいに思えてきます。
ぼくもあなたもすでに現代の文人画家かもしれませんね。