【読書感想】『背中の蜘蛛』サイバー犯罪がテーマの警察ドラマ

ぼくらみたいな日々ネットを使って情報収集したり、なんなら個人で情報発信までしちゃうような人ならだれでもハマりそうな物語の小説を読みましたので今日はその感想を書こうと思います。

誉田哲也さん著の『背中の蜘蛛』です。

以下、あらすじ紹介程度のネタバレがありますのでお気をつけくださいね。

物語は、池袋で起きたとある殺傷事件から始まります。

池袋署刑事課長の「本宮」さんは昔気質な靴底をすり減らして捜査にあたる刑事さんです。

すぐに解決するかと思われた事件でしたが、思ったように情報が集まらず捜査が難航します。

そんなおり「あること」がきっかけで一気に事件が解決します。

本宮さんはほっと胸を撫で下ろす一方で、触れてはいけない何かに触れたような気がしてならないのでした。

池袋の殺傷事件から半年後、警視庁の「植木」さんは、ずっと追っていた麻薬の売人が爆殺される事件に巻き込まれます。

一時は爆弾テロかと大事になりかけた事件が、またしても「あること」によってとつぜん容疑者が浮上します。

…と、冒頭から2つの事件が滔々と語られ、それぞれの物語に関連する登場人物が次々登場するのですが、この後さらに視点が代わり、公安部のサイバー攻撃センターの「山上」さんという、ネット犯罪を取り締まってる部署の物語が始まります。

山上さんのチームは、日々ダークウェブに潜り、日本の警察が取り締まるべき案件をチェックするという業務を行なっています。

それは、世界中の人身売買や児童ポルノ犯罪に触れながら国外のものは見て見ぬふりをしつつ、一旦国内でサイバー事件が起きればウェブ上での捜査を一手に引き受けなければならないという、メンタルに大きな負担がかかる過酷な仕事でした。

山上さんの物語の後、突然「オサム」という幻覚にうなされながら半覚醒状態で日々を送っているフラフラの男が、「リョータ」と名乗る男と知り合い、交流を深めていく物語が展開され、これでようやく登場人物が揃います。

ここまで読むまでに、場面は飛びまくるし登場人物は増えまくるしで、ぼくは何度もページを行きつ戻りつ読みました。

でも、読むのをやめられませんでした。

何か、すごく気味の悪いことが起きそうな、ホラー小説みたいな吸引力があるお話なんですよ。

そーやって読んでるうちに、内山さんと植木さんの物語がクロスし「あること」が何なのかが判明します。

「あること」を追っていった先で、2人の物語は山上さんの物語と合流します。

そして、それまでずっと何か別の話のように展開されてたオサムとリョータの話が、3人の話と繋がった時「そーいうことか!」って、もうここまで読んだらすっかり物語にどっぷりなんですよ!

この本は小説なので、描かれてる設定はフィクションだとは思いますが、どこまでフィクションなんだろう?と考えずにはいられませんでした。

と、いうかおそらく既に、実在してるんだろうなと思ってしまいます。

そしてぼくは「実在してるんだろうな」って思いながらも、今の生活をやめられずにいます。

でも、公式に何かの団体が「あります」って言ったら、どうするだろう?

おそらく世の中は非難轟々の大パニックになると思うんですが、だれも今の生活をやめないんじゃないか?と思ってしまいます。

よく政治ニュースなんかで「国民が許さない」ってあるじゃないですか。

確かに許さないんですが、忘れるんですよね。

これももし実在してるとして、世間に公表されても、一時的に「許さん!」ってなって、でも他にも怒りのニュースが日々次々出てきて、そんなこともあったねって忘れてしまうんだろうなーなんて、そんな「あるもの」がテーマの社会派警察ドラマでした。

繰り返しますが、ネットで情報収集したり情報発信してる方は、みんな興味あると思います。

オススメっす。