気になる「かたち」

先日買い物に行って、気になる商品を見ていたところ、若い店員さんが近づいてきてこう言ったんですね。

「こちらの商品で悩まれてるかたちですか?」

思わず

「はい、この商品が気になってるんですが、同じ価格帯の別の商品との差が知りたいかたちです!」と言いかけて、嫌味っぽいなと思って真摯でダンディなぼくはやめときました。

「面黒い」をひっくり返して「面白い」って方が定着したみたいに、言葉ってのはマジョリティの使い方が文化として残るものだと思ってるので、別に「言葉の乱れだ!」とかいうつもりもないのですが「かたち」の使い方って面白いですよね。

会議資料とかまとめた時は「ではこのようなかたちで会議に出させていただきます。」って言われたりとか。

そして会議に出席してみると「現状、このようなかたちとなっています。」と報告を受けたりとか。

いつの間にか、わりとパブリックな場所で市民権を得ている「かたち」ですが、みんな使い始めたのってわりと最近な気がしますよね。

絵って分解すると「かたち」と「いろ」ですよね。

ぼくは絵を描くので「かたち」には敏感で居たいなと思ってるんです。

だから余計に「かたち」が気になるのかもしれません。

でも、じゃあ「かたち」の代わりに何て言葉を使う?と聞かれたら困っちゃったりもします。

冒頭のやりとりで言えば「こちらの商品で悩まれているところですか?」でしょうか。

ただ、これだと「悩んでますよね?」って決めつけで来られる圧が強い気もします。

とはいえ「悩まれてる感じですか?」だと、なんか軽すぎる気もします。

そう考えるとなんというか、柔らかすぎず固すぎず、うまーく間を埋めてくるような、そんな妙な力がありますよね「かたち」って。

あまりに拡張高く格式を重んじるとマウントと言われ、かといって柔らかすぎるとチャラいと言われる世の中で、必要に迫られて生まれた言い回しかもしれません。

と言うわけでぼくの勝手な解釈なんですが、漢字で書くと「造形」の「形」ではなくて、「印象」の「象」を当てるんだろうなって思うんですが、いかがでしょう?

まあぼくは、天邪鬼なんでなんとか使わないようにしてるんですけどね!

そーいえば。

ぼくらが若い頃に「バイト語」とか言われて揶揄された「ご注文のほうはお決まりですか?」っていう「ほう」ってまだ健在なんですかね?

「メニューのほうをお持ちしました」ってやつ。

これは前書いたかもしれないんですが、以前よく行ってたお店の店員さんで、おそらくなんですが「お待たせいたしました」の代わりに「失意礼いたしました」って使う方がいて、レジに並んでぼくに順番が回ってきたらまず「失礼いたしました」、現金を渡してお釣りを渡す時に「失礼いたしました」、商品を袋に詰めて(まだレジ袋有料化のまえでした)渡してくれる時に「しつれいいたしました」みたいな感じで、その方もなんかコミカルだったなーって思いだしました。

言葉って面白いですね。

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