図書館で予約してたら「ドラマ化決定」ってタイミングで順番が回ってきた小説の読書感想を今日は書こうと思います。
今からだと、また予約回ってこなさそうですねぇ。
荒川帆立さん著の『元彼の遺言状』です。
小説って、自分の読んだ作品がドラマや映画になることがけっこうあって、ちょっと面白いですね。
以下、あらすじ紹介程度のネタバレがあるのでお気をつけください。
主人公の「剣持麗子」さんは、お金至上主義の勝ち気な弁護士です。
お話は、プロポーズしてきた彼氏が手にしている結婚指輪が「自分には釣り合わない安物」だったことに麗子さんが激怒するシーンから始まります。
さらに、雇われている弁護士事務所からのボーナスの査定で、自分の額が大きく減額されてることに腹を立て「こんなとこやめてやる!」と啖呵切ったりします。
その後も兄の婚約者の凡庸さに冷笑したりするシーンが描かれたりと、かなりエキセントリックな行動が続き、個人的なお話をすればぼくは読むのをやめそうなタイプのお話なんですが、なぜそこまでお金にこだわるのかって部分がすごく丁寧に書かれるので、なんか嫌味がないんですよね。
麗子さんは「世の中にはお金より大事なものがある」という言説が嫌いな様子です。
金持ちが言っても説得力がないし、かといってお金のない人が言うと負け惜しみにしか聞こえない、うむ確かに。
なんだかんだお金があると選択肢も増えるしいろんなことから自由になれる。うむうむ確かに。
冒頭から続いた自分にとって許せないことにむしゃくしゃした麗子さん、誰かとパーっとやろうと思ったものの、自分にはこういう時に一緒にはしゃげる友達がいないことに気が付きます。
ふと、大学時代に付き合っていた元カレにメールを一本入れてみたのですが、帰ってきたのは「彼は数日前に亡くなりました」という元彼の身辺整理をしているという弁護士からの返事でした。
学生時代にちょっと付き合ってただけの相手なので、悲しいとか寂しいとかそんな気持ちはわかないものの、麗子さんは暇つぶし感覚でこの元彼のことを調べてみます。
この元彼、実は役員を一族で固めている大手製薬会社の御曹司で「自分を全財産を、自分を殺した犯人に譲る。そして自分の元カノたちに自分の土地を譲る。」という奇妙な遺言を残していていました。
この遺言をめぐって社内一族は大荒れとなり、誰を犯人として認めるのかという「犯人選考会」を実施することを会社は世間に公表します。
そして麗子さんは「事件の真相を知りたい」という依頼人に雇われるかたちで、そして「元カノの1人」としてこのお家騒動に巻き込まれていくことになるんです。
設定が痛快
麗子さんの金銭感覚はちょっとぶっ飛びすぎていて、自分が譲ってもらえる軽井沢の土地をはした金と言ったりするので、冒頭の通り嫌いにはなれないものの、なかなか親しみが感じられないんですよね。
でも、犯人探しをするのではなく、依頼人を犯人に仕立てるために証拠を集めるっていう物語の設定が目新しくて面白くて、そして何より裏表なく「世の中金」な麗子さんが清々しくて読みやすかったんです。
実生活には親しみなくても、大富豪のお家騒動で殺人事件ってのはミステリーの定番ですしね。
そんな定番設定の上で、犯人を探すのではなくでっちあげるって新鮮味がなんだかとっても面白かったです。
そして、何事に対しても勝ち気に理詰めで挑んでいく麗子さんがとっても痛快で、肩の力を抜いて、楽しく読むことができました。