【読書感想】『十字架のカルテ』精神鑑定医が主役のミステリー

今日は知念実希人さん著の小説『十字架のカルテ』の感想を書こうと思います。

このお話は、精神鑑定医である主人公が、殺人を犯した犯人を相手に、相手が精神疾患なのか精神疾患を装って罪を軽減しようとしてるのかを「診察」という舌戦を繰り広げて診断するミステリーになってます。

主人公の「弓削凛」さんは、高校時代に親友を、殺人事件で失っています。

しかし、親友を殺した犯人は精神疾患と診断され、罪を問われませんでした。

親友の人生は突然奪われ、自分も悲しみに暮れているのに、誰も罰を受けないということに大きな疑問を抱いた凛さんは、精神鑑定医を目指すんです。

それから9年後、凛さんは日本有数の精神鑑定医である「影山司」さんの助手として、精神鑑定医の道を歩み始めました。

…ってところから始まり、「悪魔に命じられた」と親子心中で自分だけ生き延びた母親とか、優秀な姉を刺した引きこもりの弟とか、無差別通り魔事件を起こした大学生とか、オムニバス形式で様々な事件に影山さんと凛さんが挑んでいくお話になります。

「すごいな」と思ったのが、この物語、面白い上に啓蒙になってるんですね。

世間一般で、凶悪な犯罪が起きた時、うつ病や統合失調症なんて言葉がメディアで踊ったりするじゃないですか。

そして、冒頭の親友を殺された凛さんのように「なんで人を殺したのに罰せられないの?」なんて感じてしまうような煽られ方をすることって多いですよね。

言葉ばっかりが一人歩きしてて、うっかりするとこういった方々に対して犯罪者予備軍みたいな印象を与えかねないような状態になってることに、ガンガンに警鐘を鳴らす、そんな話の構成になってるんです。

精神疾患は誰もがなってもおかしくないもので、犯罪者に多いなんてことはないということを丁寧に説明しながらドラマが展開されていきます。

精神疾患に対する世の中の空気を巧みに使って目的を果たそうとする人物や、誤解を真実だと思って疑わない人々が次々と登場し、影山さんが真相を暴き、凛さんが一歩ずつ精神鑑定医として成長していく、そんなお話が展開されます。

なんか読んでると、自分でも頭でわかってるつもりで、それでも誤解してた部分があったかもなぁ、と襟を正されるような、そんな思いがしてきます。

その一方で、ミステリーものとして純粋に面白くて、タネが明かされた時には「あーそういうことだったかー!」と胸をすく思いがしたりと楽しくて、どんどんページをめくってしまいました。

そして凛さんは、ラストで親友を殺した犯人と対峙することになるんです。

凛さんが見出した答えとは…!?

これはおススメです!