学生時代、課題の締切前なんかはみんなで徹夜して、深夜になると変なテンションになったりするのがお決まりでした。
あまりに大学に缶詰になるので「妄想でみんなで出かけよう!」って話になり、現実世界では絵を描いてる一方で、脳内ではみんなでミニバンをレンタルして、キャンプグッズを積んで、山に出かけたりしました。
天気が良くて、暑くもなく寒くもなく、脳内の河原でバーベキューセットを広げて肉を焼いて、みんなで「美味い美味い」とワイワイ言いながら、大学のアトリエで必死に絵筆を走らせていました。
この時食べた、空中に浮かんだ妄想肉。
エア・ミート。
先日ラジオでその言葉を聞いた時、学生時代の思い出が甦ってきて、なんだかちょっと甘酸っぱくなりました。
ラジオで聞いたエア・ミートは、妄想肉ではなく代替肉なのだそうで、アメリカのスタートアップ企業が、空気中の炭素をタンパク質に変えて肉を作ることに成功してるのだそうです。
家畜を育てる必要がないため、水も草も土地も不要で、メタンガスも出ないらしく、ほんといいこと尽くしです。
また商品化はされてないとのことでしたが、いつかスーパーに並んで、はじめは富裕層じゃないと手が出ない高級食材かもしれませんが、かつて果物の王様だったバナナが今では誰でも食べられるのと同じように、いつかは庶民の食卓にも並ぶ日が来るでしょう。
スラム高校出身の学力で解釈するに、炭素からタンパク質を作るということは、人間の吐いた息からも作れるということでしょうか?
休日の昼過ぎに、うっかり「よーし今夜は庭でバーベキューだ!」なんて言おうものなら、子ども用のビニールプールをプープー膨らませるが如く、エア・ミート製造マシンに向かって二酸化炭素を吐き続けるお父さんが休日の風物詩になるかもしれません。
「あの人気俳優の吐息で作った!」なんてフレーズのエア・ミートがブランド品になったり、そーだと思ったら安い賃金で働かされてる従業員がフーフーやってたって詐欺が内部告発で明らかになったりするかもしれません。
まぁ、なんにせよ、大気中の二酸化炭素が減ってくれれば、この馬鹿げた暑さも和らいで、ほぼ二季状態の日本もかつての四季を取り戻し、暑くも寒くもない季節にミニバンにグッズを積んでバーベキューがもっとしやすくなってくれる日を、今日のところはひとまず妄想しておこうと思ったのでした。
昔描いた肉の絵です。