【読書感想】『古本食堂』疲れた時に読むと沁みる系物語

東京に出張や遊びに行くと、高確率で親切な見知らぬ人に声をかけられます。

そのたびぼくは、子どもの頃は都会は怖いところだと思ってたけど自分の地元よりよほど暖かいなぁ、とか思ってしまいます。

人が多いから、いい人にエンカウントする率も高いのかもしれませんが、とにかくよく声をかけられるので、ぼくは東京にいい印象を持っています。

今日は原田ひ香さん著の小説『古本食堂』の感想を書こうと思っているのですが、この物語はそんなぼくの印象まんまの神保町が描かれています。

以下、あらすじ紹介程度のネタバレがあります。

物語は「鷹島珊瑚」さんと「鷹島美希喜」ちゃんという2人の主観が入れ替わりながら進んでいきます。

珊瑚さんの年齢は書かれていないのですが、老眼鏡をかけていたり、これまで地元の帯広でパートをしながら母親の介護をしていたり、近所の友人がヘルパーさんを雇っていたりしている話が書かれたりするので結構な高齢のようです。

そんな珊瑚さんには「磁郎」さんというお兄さんがいて、神保町で鷹島古書店という古本屋を営んでい他のですが、突然死んでしまい、お兄さんのお店をどうしようか考えるために人生で初めて地元を離れ、東京に出てきます。

美希喜ちゃんは珊瑚さんの親戚の娘で、遺産相続のことが気になる母親に「お店のことを探ってきてほしい」と頼まれる読書が大好きな都内の大学院の文学部生です。

これまで自分のことを後回しにしながら生きてきた珊瑚さんは、東京に出てきて遅い青春を謳歌しつつも、店をどうしようか悩んでいます。

美希喜ちゃんはこれまで読書大好きだけで進学してきましたが、大学院を卒業した後どうしようか悩んでいます。

そんな2人が店員をする古本屋さんに出入りする人たちとの交流を描いた群像劇なのです。

もうこれ、あったかい話にしかならないですよね。

最後ちょっとほろりとしてしまいました。