【読書感想】『そして、よみがえる世界』未来はユートピアな方がいい

今日は西武豊さん著の小説『そして、よみがえる世界』を読んだ感想を書きます。

あらすじを紹介する程度のネタバレがありますのでお気をつけください。

主人公の「牧野」さんは、前途洋々な脳外科医だったのですが事故に巻き込まれて脊髄を損傷し首から下が動かなくなってしまっています。

しかしこの世界では、「テレパス」という脳内に埋め込む端末(スマホみたいだなーって思いました)によって、考えるだけで介護ロボットを動かすことができたり、VRもものすごい進化を遂げていたりするので、牧野さんは必要な時にロボットに主観を切り替えて自分で自分を介助する生活を送っています。

そしてこの技術でまた脳外科医として働きたいと考えています。

そんなある日、大学の恩師である「森園」先生から、事故で記憶と視覚を失った「エリカ」という女の子の執刀を依頼されるんですね。

現在、森園先生が身を置いているのが、世界最大の仮想空間であるVバースを運営している医療テック企業のSME社で、森園先生はこの会社の7人の幹部、通称ドワーフの1人なんです。

SME社はドワーフたちが経営の全てを握っていて、内部の情報がほとんど社外に出ないという会社です。

突然森園先生が連れてきた牧野さんのことも、もちろんドワーフたちは煙たがり、何かを隠している様子です。

そして、患者であるエリカという少女の経歴も全く不明です。

様々なことを不審に感じながらも、牧野さんは脳外科医として起死回生を目指し、頑張るんです。

そんな中、社内で謎の黒い影の幻が出没するようになり、殺人事件が起き、エリカの謎が明かされていき…みたいな感じでお話が展開していきます。

ホラーになり、ミステリになり、そして後半はサイバーパンクなバトルアクションにもなります。

テック系の技術が超進化した未来って、ディストピア風に描かれることがなんだか多いなーって印象なのですが、このお話もそんな未来を描きながら、でも、とっても幸せな世界のように感じました。

首から下が動かない牧野さんが全編通して大活躍です。

まあ、この本、タイトルがすでに前向きですもんね。

巷ではAIがどんどん発展して人の仕事がなくなるとかあれこれ言われていますが、進化した技術を使って、人の力だけではできなかったようなことができるようになることをワクワクしたいじゃないですか。

なんかこう、現実の世界もこんなふうに前向きに慣れたらいいなって思いながら読みました。

最後にこの小説、殺人のシーンだけはかなり残酷描写なのでお気をつけください。