【読書感想】『マチネの終わりに』アラフォーの不器用な愛すべき恋の話

 さて今日は、最近読んだ余韻から抜けられなくて困ってる小説のお話を書きます。

アラフォーの恋を描いた「マチネの終わりに」 

「分別盛り」って言葉、ご存知ですか?

…と、出し抜けに偉そうに問うてみますが、ぼくも彫刻家ロダンの弟子、カミーユの作品のタイトルで初めて知った言葉です。

画像検索するとこんな感じです。

「分別盛り」って言葉自体は「モノの分別がしっかりわかるようになったイイ大人なお年頃」を指すそうなのですが、この彫刻作品は「老婆に連れて行かれる青年と、追いかけようとしながら泣きじゃくる美女」がテーマになっていて「どこが分別盛りやねん!?」って言いたくなります。

でもコレ、ロダンと弟子の美少女カミーユ、そしてロダンの妻ローズの複雑な関係を知れば知るほど「なるほどな」って思わされ、「分別盛り」というタイトルがいかに皮肉なものなのかって考えさせられる名作なんですね。

ぼくはこの本を読みながら、「分別盛り」についてあれこれ想いを馳せました。

マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

この物語は蒔野さんとういうギタリストと、洋子さんという美人ジャーナリストの話です。2人はアラフォーです。これはアラフォーの恋の物語です。

蒔野さんは周りから「天才」と言われていて評価はめっちゃ高いのですが、本人は最近行き詰ってスランプ気味です。音楽家として円熟期を迎えてしまい、これ以上自分が上達するイメージが持てずにいるんですね。自分の音楽にワクワクできない。

そんな時に出会ったのが洋子さんです。洋子さんは記者としての使命感に駆られてイラク支社に自ら志願して、アメリカ軍のイラク派兵について追いかける(舞台は2000年代です)くらいの芯の強い女性です。

2人は出会った日に、自分でも気づかないうちに、お互い相手に恋してしまいます。しかしはじめは「自分もいい歳の大人だし」みたいな感じで、そんな若い頃のような情熱にかられた気持ちも行動もいさめようとします。

とくに洋子さんは、大学時代から知っている婚約者までいます。ただ、婚約者に対して熱れつな愛情を抱いているかと聞かれたら「そろそろ私も結婚出産を考える最後のチャンスかも?」って時にたまたまプロポーズしてきたのが彼だった、っていう人なんですね。

 もうおわかりですね?

この物語は、若い頃のように恋する気持ちを原動力に無鉄砲に走ろうとする本能的なものと、「いい大人がそんな不恰好で不道徳なことできるわけがない」と理性的なもののせめぎあいに苛まれながら、もがき苦しみ、その結果すれ違いまくる男女の物語を追う羽目になるお話なのです。

「もうツライから読みたくない、でもラストは気になるから続き読む!」

この本を読みながら、ずっと考えていたことです。とくに後半の展開とか、ホントやばいです。ちょっと予想の斜め上をいく展開が繰り広げられます。世の中と自分との立ち位置とか、恋愛に対する価値観とか、同年代だから余計に感情移入してしまうのかもしれません。

何でこんなに恋愛ゴトになると、人間は無様になるんでしょうね?いい歳なのだから、いいかげんカッコつけたいのに、全然カッコつけられないですよね。

「分別盛り」なんて、いつまでもやってこない気がします。

でも、そんな無様なところもコミで、「人間っていいな」「恋愛っていいな」って思えるのかもしれないですね。

ぼくは春になりかけのワクワクなシーズンに読みましたが、秋の人恋しい夜なんかに読んだ方がいいかもしれないな、と思いました。

おまけ

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ぼくがブログにアップしている漫画の、戦隊モノのブルー的ポジションのグレムくんの落書きです。

先日紹介した、らんさんの描いてくださったグレムを見て、頭身上げた彼を描いてみたくなった1枚です。

おお、なかなかカッコよろしいな!