「穴」を読んだ。結婚について考えた。

賛否両論あるのは重々承知の上で主観を書くと、今の日本の「結婚」てのは農業を主産業としなくなった時点でかなり無理があると思うんですね。個人個人が国から与えられた土地を子孫を残しながら未来永劫守っていく、そーすることで国が豊かになるってのが日本の結婚観のベースにあったわけですから。でも、農業やめちゃったら土地はお金を生まないどころか、せっかく土地の上に築きあげた城が災害やら事故やらでパーになっちゃかもしれないわけです。これから「情報」や「サービス」てな場所に関わらないものにさらに産業の重点が置かれていくならなおのことです。

と、書いておきながらぼくは結婚反対論者ではないです。だって結婚してるんですから。

なぜなら、無理がきてようが「結婚は大事」っていう価値観が世の中に浸透し続けてるからなんですよね。「大切な人と一緒に暮らす。」ってことを成すために、結婚すると得られるメリットというか権利が多い。

大切な人に朝いちばんに「おはよう」と言えて、仕事を終えて帰ってきたら「ただいま」「おかえり」のやりとりができて、「おやすみ」と言い合って眠ることを法的に認めてもらえるわけですから結婚はいいことだと思います。好きな人を妊娠させて、ビフォーなら殴られ、アフターなら祝福されるのが結婚です。(ぼくはちゃんとアフターです)

てな、今の日本の社会では本来の目的が果たせなくなった結婚と、それでもみんなに認められてる結婚ににつきまとう「変な感じ」についていろいろ思いをめぐらされる羽目になったのはこの本を読んだからです。

穴

 

主人公のあさひさんは、今まで正社員として就職することなく結婚したアラサー女子です。旦那はバリバリのサラリーマン。朝早くから夜遅くまで働き、一緒に居られるのは夜遅く帰って旦那が夕飯を食べる時くらい。でも、その時間も旦那さんはケータイいじっちゃう。

そんな旦那さんに転勤の辞令。

引っ越しを考えなくてはならなくなった時に出てきた案が、旦那さんの実家の隣にある義母さん名義の空き家に住むこと。

あさひは自分の仕事をやめなければならなくなるけど、どーせ派遣だし家賃はかからなくなるしと引っ越すことに。

晴れて専業主婦となったあさひさんですが、昼間特にやることはないし、周りには何もないし、旦那の実家の気配は常にするし、旦那は相変わらず帰り遅いしという生活になります。

そんなあさひの、義母さんやご近所さんとのやりとりや、突如現れた謎の獣についていった先で落ちた穴のエピソードなどが綴られていきます。

もう、すべてが現実的な「結婚すると突如目の前に現れる異世界」の延長線上にあるものばかりで妙な親しみを感じながらも、なんか「気持ち悪い」物語を読み進める羽目になります。とにかくなんか気持ち悪い。親戚、ご近所にまつわる気持ち悪い話。でも「ちょっとわかるかも」って感じ。

読み終わったあと決してすっきりしないのですが(そのせいでこんなに長い文章になっちゃったわけですが)あさひの日常が気持ち悪いすべての原因は、旦那とのコミュニケーションが少ないことのように思いました。

なので、ぼくは「奥さんを話をするときはスマホいじりながらとかしないようにしよう」と強く思いました。という夫婦愛のエピソードで締めます。