「ピエタ」ってのがありますよね。「はりつけにされて絶命したキリストを十字架から下ろして聖母マリアが抱きかかえて涙する」ってシーンを表現した絵や彫刻の総称なのですが、この時キリストは33歳なんです。んでマリアがキリストを産んだ歳は15、6歳だったとされてるから、ピエタでキリストを抱きかかえて泣いてるマリアは50前のおばさんなんですよねー。
が、ピエタで画像検索してでてくるほとんどの聖母マリアは妙齢の美女です。そもそもマリアはみなさんご存知の通り神の力で処女のままご懐妊という設定です。
敬虔なキリスト教信者の方には申し訳ないのですが、いち美術ファン・サブカルファンとしては「キリスト教を広めるために投入された萌え要素が聖母マリアだった」と見えちゃうんですよね。
時代が変わろうが、技術が発達しようが、アプローチの仕方や表現方法が変わろうが人間の根源は変わらないのかもなー、なんてそんなこと考えながら最近「美少女の美術史」って本を読みました。

美少女の美術史 -浮世絵からポップカルチャー・現代美術にみる"少女"のかたち
- 作者: 「美少女の美術史」展実行委員会
- 出版社/メーカー: 青幻舎
- 発売日: 2014/07/25
- メディア: 単行本
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これは2014年に青森県立美術館、静岡県立美術館、島根県立石見美術館を巡回してた特別展の内容を収めた本です。島根の行こうと思って島根県旅行を計画してたら僕の勘違いで一ヶ月遅れてて見れなかった思い出のあった特別展でした。
まず表紙がMr.さんなのが強烈ですよね。
この方の作品を初めて見た時、ものすごい衝撃だったんですよね。「こんなに純粋に欲望をむき出しにしたものが海外ではこんなに評価されるのか!?アートって面白い!」って思ったもんです。そんなMr.さんの表紙からぱらりぱらりとめくっていくと、浮世絵師の鈴木春信から初音ミクまで、美少女が歴史とともにどのように描かれてきたかをいろんなキーワードから紐解いてる感じの内容です。
まぁー面白い。喜多川歌麿の浮世絵の数ページ後にクリーミィマミが登場したりするわけです。
「山口百恵は菩薩である」なんてフレーズも飛びだすように、すごーくドライな視点で見れば、菩薩像に手を合わせ祈りを捧げる行為とアイドルに熱狂する姿はよく似てます。そもそもアイドルは偶像って意味ですしね。でもアイドルは人間なので引退するし結婚もするし年齢も重ねていくことを考えれば、菩薩像のように普遍的なものはどちらかといえば「人の手でつくられた美少女」の方なのかな、とも思えます。
だからぼくらは、かつて神様の姿を表現した作品に対して抱いていた親しみと畏敬の念を、現代では美少女作品に抱くのかな?と。
まあ、こんな風に、いつの時代もこれからも、ぼくらはなんだかんだうんちくや方便を並べて美少女を描き続けるのでしょうね。それが業なのですよ。