絵の添削をお願いされたのでガチ目にやってみます!(その1)

過去3回に渡って、ブログ友達のがっちゃん (id:gu-gu-life)さんからいただいた絵の質問についてお答えする記事を書かせていただきましたが、なんと今回、質問と合わせてイラストの添削もたいへん恐縮ながらさせていただきました!

今回はお預かりしたイラストについて、ぼくが感じたことを僭越ながら述べさせていただこうと思います。

がっちゃんさんからお預かりしたイラストと質問内容

まず、イラストがこちらです。

f:id:rito-jh:20190330070219j:plain

これは、がっちゃんさんがブログでお子さんの習い事について書かれた時に使われてたイラストですねー!

www.gu-gu-life.com

まずはじめにお断りさせていただくのですが、ぼくはこのイラストに対して第一印象では特に違和感を感じたりとかありませんでした。

「お兄さんは遊んでるのになんで私だけ…」というがっ子ちゃんの気持ちがダイレクトに伝わる微笑ましいイラストだと思います!

しかし、イラストとともにがっちゃんさんから具体的に2点のご質問をいただきましたので、この点を踏まえて改めてじっくりイラストを拝見させていただき、考えたことを述べさせていただこうと思います。

①指導者である母のサイズ感がうまくかけない。(遠近でちょっと小さくしてみたものの、何か縮尺比みたいなものが本来はあるのでしょうか)

②ピアノのように凹凸もデザインも少ない物だと、どうしても単色になってしまい、ただの黒いものになっている

という部分がうまくかけなかったな〜と自分で反省している点です・・・。

もちろん他にもお見苦しいところが多々ありますので、ビシバシ「ここが!」みたいに言っていただけると嬉しいです!!!

①遠近について思ったこと

①の質問では、イラスト後方にいらっしゃるお母様の位置が、がっちゃんさん的に「いまいちしっくりこない」と感じられてるのかな?と解釈しました。

遠近の「縮尺」というと「線遠近法」が代表的ですよね。

これは「遠くにあるものほど小さく見える」って原理を利用して、小さくなってって最終的には点に見える部分(「消失点」と言います)を最初にとってそこから線を引き、遠近を集約させていくテクニックですね。

f:id:rito-jh:20190330071320p:plain

↑これは画面の中に点が1つなので「一点透視図法」というやつです。

ダヴィンチの「最後の晩餐」はキリストの眉間に消失点があることで有名ですよね。

透視図法を使って人物に遠近をつける場合は、画面に出てくる登場人物が横一列に並んだ時のサイズ差をあらかじめ考慮した上で、地面の高さも計算しながら配置していく必要があります。

今回のイラストに線を入れていくとしたら、こんな感じでしょうか?

f:id:rito-jh:20190330071923p:plain

「ピアノの練習をしてる」ことが今回のテーマですから、鍵盤のあたりに消失点をとって線を引いてみました。

本当はもっと線が必要ですけどね。

この線をもとに、2人が横一列に並んだ時の体格の差を念頭に起き、地面に立ってるようにしながらお母さんをやや後方に描く必要があります。

…が。

面倒くさいんですよね、これ!

もし写実的な絵画を描きたいのであれば必要な工程ですが「楽しくお絵描きしたいなー」くらいならそこまで必要ないんじゃないかな?ってぼくは思うんです。

実は線遠近法が日本に入ってきたのは明治維新以後で、それ以前の日本美術にはこんなテクニックは使われていません。

でも、江戸や平安時代にも素晴らしい絵はたくさん日本にもありますよね。

過去に遡らなくても、絵本なんか読んでも、ガチの透視図法使ってるものなんてほぼ見かけません。

でもぼくらは違和感を感じることなく、絵本の世界に没入して、絵を楽しんでますよね。

要は、違和感を感じなければいいと思うんです。

そこで、どこが原因かじっくり観察させていただきました。

そして見つけたのがここです。

f:id:rito-jh:20190330072925p:plain

制作過程を見てないのに勝手なことを言いますが、多分このイラストは①がっ子ちゃんとピアノ→②お母様の左手→③お母様の体、という順に画面手前から描かれたんだと思うんです。

それ自体は別に悪いことではなくて、パーツごとに奥に奥に描いてく技法は「対比遠近法」といって北斎の浮世絵なんかでもよく見る技です。

対比遠近法は、線遠近法で描かれた洋画を見てびっくりした江戸の浮世絵師たちが、見よう見まねで歌舞伎の舞台装置なんかを参考にしながら編み出した遠近法で、画面の中にモチーフを、近景、中景、遠景に分けて大きさに変化をつけて描く技法です。

ぼくはこれが結構好きです。

で、このイラストで言えば

近景:がっ子ちゃん+ピアノ

中景:ママさんの左腕

遠景:ママさん

となるのかな?と思います。

f:id:rito-jh:20190403175133p:plain

分解するとこんな感じ

この「中景」をちょっと直せばよくなるのかな?と思ったんです。

「中景」のママさんの左腕

この左腕は、近景と遠景をつなぐ役割を果たしていますが、気になるところが2点あります。

そこでこんな感じにいじらせていただきました。

f:id:rito-jh:20190330105158p:plain

①肩幅を調整

ママさんの首から肩までが若干狭いかな?と思ったのです。そのせいで、見方によったら脱臼しているようにも見えたのでママさんを左にずらし、肩幅を確保しました。

②袖口が見えるように調整

ママさんは斜め前を向きながら楽譜を指差す位置にいます。

しかし、袖口が真横を向いていたので、角度がつくよう調整してみました。

セパレーション

さらにこんな感じで、がっ子ちゃんとママさんの間に白線を入れるとさらにみやすいかもしれません。(無理には必要ないかもしれません)

f:id:rito-jh:20190330105443p:plain

てな具合でいかがでしょう?

よくなったでしょうか!?

本当は、この位置関係ならママさんは右手で楽譜を指差した方が描きやすいかもしれません。

しかし、あえてママさんの肩肘ががっ子ちゃんとの間に入ることで「ピアノのレッスンに対する2人の相反する感情」が演出されてて見事だと思うのです。

さて、では2つ目の質問に…と思ったのですが結構なボリュームになったので次回に続くにさせていただこうと思います!