こんにちは。
今日は河合莞爾さん著の『800年後に会いにいく』の感想を書きます!
あらすじ紹介程度のネタバレがありますのでお気をつけくださいね。
タイムワープは物理的に無理!ならば質量を持たない電子データは…?
どうやら最新の物理学ではタイムワープは無理という結論らしいです。
その理由の中の1つに「宇宙の質量は常に一定なので、今ある質量が過去か未来に移動して、移動先の宇宙の質量が変化してしまったらオオゴトになる」って論があるそうです。
なので、質量があるモノは移動できない。
そこで「じゃあ質量のない電子データならどう?」っていうのがこの物語のミソでした。
物語は、これといった特技もない少年時代を過ごし、三流の文系大学を卒業する時期になって「自分に何もない」と人生で初めて焦った主人公の飛田旅人くんが、思い切って飛び込んだIT企業で「とりあえず試用期間」として働きはじめるところから始まります。
旅人くんは、クリスマスイブの夜も特に予定がありません。
美人の先輩を「お先にどうぞ」と見送り一人寂しく残業していたら、「私を助けて」という謎の美少女の動画を受信してしまいます。
そして動画の送信日時はなんと800年後。
冴えない君のところにパソコンから美少女が出てくる系ラブコメ…かと思いきや!
公旅人くんが「これは運命の出会いだ!」と未来へなんとかタイムワープしようと努力する物語かと思えば、そんな展開にはなりませんでした。
東日本大震災以降日本が抱えている原発事故や、アメリカの9.11テロのトラウマが物語の根底に横たわっていたり、そうかと思えば現在のIT技術の進歩がもたらす未来の可能性について真面目に語られたりと、ちょっとおめでたい主人公の旅人くんの周辺はかなり硬派にがっちり固められた物語になっていました。
ただ、話のバックボーンがやけにリアルなだけに、800年後に行こうとする旅人くんの夢も「なんが頑張ればなんとかなるんじゃない?」みたいな風に思えて「自分も夢を持って頑張ってみようかな?」なんて勇気をもらえる、そんなお話でした。
多分、冒頭の旅人くんがダメダメ君なのがいいんですよね。
「何者でもない」主人公が「世界でたった一人の誰か」になるお話ってやっぱ夢があります。
恋愛モノといいながら、ただの恋愛じゃない。未来を見据えたITラブ(あ、これだとITがラブみたいだ…)そんなお話でした。
いい話でした!