こんにちは、りとです。
最近、今更ながら『マギ』を全巻一気に読みまして「面白いなぁー!!」と思ったので今日はその感想を書きます。
核心には触れませんがある程度のネタバレはあるかと思いますので、お気をつけください。
千夜一夜物語をモチーフにした冒険ファンタジーかと思いきや…!でした。
今更あらすじをぼくなんかが…とも思いますが、ざっくりいうと「マギ」と呼ばれる世界を統べる王になれる存在を選び「王の器」として導く力を持った魔法使いの少年「アラジン」と、彼に見出された「アリババ」の2人がいろんな困難に立ち向かいながら冒険していく物語でありますが「実は…!」が多くてうまく説明できません。
それくらい、第一印象と違う展開をなんども繰り返していくお話でした。
「ジン」と呼ばれる精霊みたいな魔神みたいなものを宿した武器「金属器」が眠る「ダンジョン」が世界各地に点在していて、アリババくんは「ダンジョンに潜って冒険するのが夢だ」って冒頭で語るので、アラジンと出会った事をきっかけに次々にダンジョンに潜って金属器を手に入れて、どんどん強くなっていくお話かと思いきや、アリババくんがなかなか強くならないんですよ。
金属器を持った者は、ジンの手助けを借りて派手な魔法が使えたり、魔装と呼ばれるかっこいい姿に変身できたりするのに、あんまりそういうシーンも描かれません。
物語は次第に国と国との戦争の話になっていきます。
そして「敵」だと思ってた人や国にも、その人や国なりの事情や信念があったりといった部分が丁寧に描かれ「え…そうなの?」ってなります。
置かれた状況や文化風習、信条の違いによって生じる摩擦による衝突の様子が描かれ、アリババくんが悩んで必死になって戦争を止めにあちこち交渉しに行って逆に論破されたり、アラジンは「何が一番正しいのか」を見極めようとする展開が続きます。
「なぜ世の中から戦争はなくならないか」に対する答えの見せ方は本当に「わかりやすい!」って思いました。
最終的には「身分平等の代わりに競争させられる資本主義」と「一強独裁の代わりに全て与えられる社会主義」はどちらが人は幸せなのか?みたいなテーマを突きつけられてるように感じました。
唯一無二の「正義」がない世界の物語
ぼくは昔読んだ、宇野常寛さんの「ゼロ年代の想像力」という本を思い出しました。
ネットが普及して、世界中のいろんな情報に簡単にアクセスして玉石が混交する複雑怪奇な現代では、もう何が本当の正義かわからない、だからヒーローも悩むし、最強でもないらしいです。
この本で面白かったのが、90年代までのヒーローは、悟空やケンシロウのようにどんなにピンチになってもパワーアップして最強になって必ず悪を倒してくれるけど、ゼロ年代移行のヒーローは、得手不得手があって勝てる相手と勝てない相手がいるって論じられてるとこでした。
『マギ』でも、アリババくんもアラジンも悩みまくります。
読んでるぼくも、誰を敵として見なして誰に感情移入すれば良いか困りながら読みました。
でも、そこがすごく「面白いなぁー」って思いました。
現実社会だって「あの人いやだなー」って思う相手にも良いところがあってその部分を好きになって付き合ったり結婚したりする相手がいるわけですよね。
ぼくのことを「あいつ嫌いだわー」って思ってる人がいるはずなんです。
そのことに対して、良いとか悪いとか、正しいとか正しくないとか、そういうのは決められないもんなんだろうな、なんて思わせてくれました。
飲み屋で愚痴りまくってるおっちゃんも、ぼくには想像できないくらい辛い目にあってるのかもしれないし、満員電車で頑なに席を譲らない若者も、ムチャクチャ体力使う労働を強いられた後かもしれない。
読むとそんな気になってくる「道徳の教科書」みたいな漫画だな、って思いました。
でも、ちょいエロがあったりヒロインポジションのモルさんが可愛いので、やっぱ道徳の教科書には向かないかもしれない(褒め言葉)