ぼくは定期的に「これは面白かったー!」って本の感想をブログに認めているのですが、たまに「これはページをめくる手が止まりませんでしたよ!」ってくらいドツボな本に出会うことがあります。
そんな本を読んでる間は本当に幸せで、読み終わると喪失感もまた凄かったりします。
今日はそんな小説のお話です。
ぼくがページをめくる手が止まらなくなったあたりまでのお話を、スーパー端折って書きますのでネタバレにお気をつけください。
13歳で「もう自分の人生にもう朝は来ない」と悟ったお坊さんの話
主人公の久斎は由緒正しい武家の妾の子として産まれます。
ところが腹違いの兄である正妻の子らに比べて体が大きく優秀だったため、幼い頃から存在を疎まれ、10歳の時に寺に入れられてしまいます。
寺でも「元武家の子」と兄弟子たちに虐められる日々を送るのですが、水汲みの沢で毎朝顔を合わせる年上の村娘の「しの」とのひとときを癒しとしながら日々を送っていました。
久斎にとっては、夜が明けて、水汲みに行き、しのに会うことだけが人生の喜びだったのです。
しかし、そんなしのに不幸な出来事が起こり、久斎は徹底的に自分の人生と仏門に嫌気がさしてしまいます。
寺を飛び出した久斎は、丁稚の奉公先から逃げ出した「万吉」という同い年の少年と出会います。
万吉に名前を聞かれた久斎は「自分にはもう二度と希望に満ち溢れた朝日は登らないだろう」という思いから「無暁」と名乗りました。
2人は意気投合し、「吉原に行こう」という万吉の誘いに、拒否する理由も他に行く当てもなかった無暁はついて行くことにします。
吉原についた2人はチンピラに絡まれます。
しかし、無暁がチンピラを撃退してしまいます。
もともと体が大きく、武家の子時代に稽古も真面目に取り組んでいた無暁は、腕っ節が強かったのです。
チンピラたちの親分であるヤクザの若頭に腕を買われた無暁は、万吉とともに組で働くことになりました。
2人はしばらく吉原でやくざ者として生計を立て、自分たちの今後の見通しを立てることができるようになったころ、またしても大きな事件が起きます。
この事件で無暁は人を殺めてしまい、島流しの刑に処せられます。
坊主崩れで、ヤクザ者として日々を送っていた無暁は、何も手に職をつけておらず、八丈島での厳しい流人生活を強いられることとなります。
劇的な出来事がジェットコースターのようにひっきりなしに起きるんです
ここまでの話でもまだ前半です。
しかし、すでに内容がものすごく濃いいんですよね。
こちらを飽きさせることなく、ドンドン話が進んで行くので、もう目が離せません。
最終的には、無暁が死ぬ日までが綴られ、その間ドラマチックな展開が次から次へと起こるのです。
本当に辛くてどうしようもない、全てに絶望してしまうようなことが起こりまくるのですが、そのたびに無暁に手を差し伸べる人が絶妙なタイミングで現れます。
そして無暁は救われ、少しずつ成長していきます。
「物語だから」って言えばそれまでですが、思い返せば、ぼくもいろんな人に助けられてるよなー、なんて思いました。
そこそこ「いい人生だよな」と自分で思っているんですが「ここまでの人生設計でどこまでが自分の力だったかなー?」なんて考えました。
改めて考えれば誰かに助けてもらってることの方が多いくらいです。
もちろん、ブログで絡んでくださる皆さんにも「癒し」という助けをもらってます。
そういう「人の縁」みたいなものを考えずにはいられない話です。
タイトルにある「鈴」
この鈴が出てくるのは、物語終盤です。
晩年、無暁は大きな決断をします。
自分のこれまでを振り返って、この決断をせざるをえないのですが、それが切ないくて仕方ないんです。
読み終わった後「世間一般ではいろんな捉え方があるだろうけど、無暁本人にはこれがやっぱベストだったんだろうな」と思うんです。
そして、自分もそんな終わり方ができたらいいな、と思いました。
(同じ死に方はあんまりしたくないけど)