今日は呉勝浩さん著の小説『爆弾』の感想を書こうと思います。
2023年6月現在で今年読んだ小説でトップレベルに面白かったです。
物語は「等々力」さんという刑事が、酔っ払って酒屋の自動販売機を壊し、止めに入った酒屋の店主も殴って逮捕され、東京都中野区の野方署に連行された中年のおっさんを取り調べるシーンから始まります。
このおっさん、自分の名前が「スズキタゴサク」だということ以外、記憶喪失で何も思い出せないと言います。
おどけた風で自分を卑下しながら等々力さんの質問を適当にかわすのですが、突然「自分には霊感があり、10時に秋葉原で爆発があります。」と言い出します。
「何を馬鹿な」と等々力さんたちが思ってたら10時に本当に秋葉原で爆発が起きたという通報が届き、スズキタゴサクは「ここから三度、次は一時間後」と「霊感でピンときた」と予言します。
これを受け、捜査一課からきた「清宮」さんと「類家」さんが等々力さんに代わりスズキタゴサクの尋問を始めます。
スズキタゴサクは2人に9つの尻尾というゲームをしましょうと持ちかけます。
そして、このゲームの中に、残りの爆弾の場所に関するヒントが散りばめられているのですが、果たして清宮さんと類家さんは、スズキタゴサクの出すクイズに答えることができるのでしょうか?
って話なんですね。
このスズキタゴサク、自ら逮捕されているわけですからいわゆる「無敵の人」です。
そんな犯人が、警察を手玉に取るんです。
警察としても、容疑者を捕まえていながら爆弾テロを防ぐことができなかったら…と戦々恐々です。
緊迫する警察と、ニチャニチャ笑うスズキタゴサクの舌戦は続きが気になって仕方のないミステリでした。
この物語、他にも見どころがいっぱいです。
等々力さんの過去ととある警察の不祥事
スズキタゴサクの正体
爆弾テロをエンタメとして消費する一般市民
報道と同調圧力
この物語で描かれる、1番の悪はなんだろう?って考えだすと、思考がグルグルです。
やー、面白かったっす。