ぼくがひとりで勝手に盛り上がっている「隙間時間にちょこちょこサブスクで配信されている映画を見よう」シリーズ第2弾は『わたしの叔父さん』です。
見始めてから何分間かわからないのですが、かなりの時間セリフがありません。
妙齢の女性が目を覚まし、着替えを済ませ、足の不自由なおじさんの介護をします。
2人は共に暮らしているようで、農場の牛の世話を始めます。
日が暮れたらテレビを見ながらお菓子をつまみ、それぞれの部屋で寝る。
淡々とした2人の日常がドキュメンタリーのように映し出されます。
正直いうと「他の映画にしようかなぁ」と思ったりもしたのですが、それくらいになると、やっと2人の背景がわかってきます。
以後、ちょっとだけネタバレを書きます。
主人公のクリスは、小さかった頃に家族全員を失っているようです。
そんな彼女を引き取って育ててくれたのが「叔父さん」だったのですが、高校卒業間際に叔父さんが倒れてしまったため、クリスは大学に進学して獣医になるという夢を諦め、倒れた後遺症で足を悪くしたおじさんの介護をしながら、おじさんの農場をクリスが主となって切り盛りしている、というのが次第にわかっていきます。
足の不自由な叔父さんと、50頭の牛の面倒を日々見るために自分は何もできないどこにも行けないクリスの変わらない毎日に、ちょっとした転機が…ってところまで話が進んでからは、それぞれのシーンでのクリスと叔父さんの心情を想像するのに忙しい展開となりました。
登場人物たちが自分の気持ちを吐露しない、表情もあんまり読めない、そんな作品なんですよ。
なので、見る側があれこれ想像しないといけない。
しかも、ついでに言ってしまうとハッピーエンドなのかバッドエンドなのかわからない終わり方をするんです。
以下、ぼくの独断と偏見なのですが、クリスは「絆という呪い」に絡め取られているように見えました。
第三者の目で見れば、クリスは叔父さんのために自分の人生を棒に振っているように見えます。でも、クリスは毎日の生活を嫌がっているようには見えません。
彼女は家族を失ったことがトラウマとなってしまっていて、叔父さんがいなくならないことが最優先事項になってしまっています。
「自助・共助・公助」の1つの真実のように思えました。
そして、そんなシビアな内容を、美しいデンマークの景色でやんわりと中和して映像作品としている監督さんの手腕、すごいなーと思いました。