どうもどうも、りとです。
今日は本の感想です!
取り上げるのは佐藤多佳子さん著の「明るい夜に出かけて」です。いつも通り、序盤のあらすじを追った後に、感じたことをダラダラ書きますよ!核心に触れない程度のネタバレ含みますよー。
あらすじ
舞台は金沢です。主人公の大学生・富山は「接触障害」を患っていて、人と触れることができません。「彼女ができれば治るだろう」と思っていたのに、せっかくできた彼女にも触れることができず(性欲はあるのに)、それがもととなって人間関係がこじれ(「彼は私の手も握ってくれない、本当に私のことが好きかの?なにかあるの?」的なところからツイッターでプライベートを詮索され、みたいなやつです。今の若者は本当に大変だと思います。)、 大学を休学します。
しかし、富山は全く社会との接点を断ち切ってしまってはならない、と深夜のコンビニでバイトを始めます。
ファッションにもこだわりを持っていて、止むを得ず休学しても完全に社会から撤退することもせず、毎日を生きる富山の一番の趣味は「ラジオのネタ職人」であることなんです。
「職人」という言葉はラジオを聞かない方にはピンとこないかもしれませんが、番組のコーナーに熱心にネタメールを送って、番組で読まれることを喜びとしていて、主に常連になった人をさす言葉です。
熱心な職人だったことも、休学するきっかけの1つになっていた関係から、富山は職人からほとんど足を洗っているのですが、唯一『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』にだけは今でもメールを送っているのでした。そして、自分がラジオに投稿していることは、だれにも言っていないのでした。
ある日、富山がいつも通りバイトをしていると、ちょっと風変わりな女の子がコンビニにやってきます。いわゆる「不思議ちゃん」な風貌です。ジャンプの輪ゴムを外してがっつり最初から最後まで立ち読みをする彼女に注意しようとした富山は、あることに気がつきます。
彼女のリュックに、『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』でものすごく面白いネタを投稿した時にしかもらえないレア缶バッジ「カンバーバッジ」が2つもついていたのです!
衝撃を受ける富山、そして自分と同じ地域に住んでいて、神がかった面白ネタを投稿しまくる職人のラジオネームを思わず口走ってしまいます。
「虹色ギャランドゥ!?」
「っ!?」となる不思議少女。少女が言います。
「お前は誰だ!?」
そんなサブカル感溢れるボーイミーツガールな物語が、この本でした。
共感が止まらない
・全編から醸されるラジオ愛
登場人物はフィクションでしょうが、登場するラジオ番組は全て実在のモノなんです。『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』以外にも、いろんな番組が登場します。そして、富山はすごく冷静に「どうやったら読んでもらえるようなネタメールが書けるか」を研究しています。ぼくも普段からラジオをわりと聞くので(そして場合によってはメールもするので)親しみを感じずには居られない…そして、ふだんの富山は完全に小綺麗な身なりのクールキャラを演じているので、そのギャップがまた、たまりません。
・「創作」を生業としている登場人物たち
富山がラジオで読まれるネタを考える原動力の根っこには「ものかき」としての欲求があります。作中、富山はラジオのネタとは別に詩を書くのです。言葉を操りたいと思っているキャラなんですね。それは、人に直接触れられないからこそ、代わりに言葉で相手の心にまで触れ合いたいという欲求のようにも思えて切なくなります。
他にも、演劇をする人や、歌い手、ユーチューバーなんて言葉が出てきます。何かしら、アマチュアで創作をしようとしている若者たちの群像劇なんですね。たまりません。
・ラジオを通して感じる「繋がり」
ラジオ好きが口を揃えていう魅力に「耳元で自分だけに囁かれているようで、それでいて一人じゃないと思わせてくれる」というのがありますね。深夜に一人、静かな部屋で賑やかなラジオを聞く、そんなことをしている人が自分以外にもいる。夜という海の中にたくさんの小島があって、ラジオで繋がっているような感覚、これがなんとも言えないのです。「深夜のコンビニでバイト」というのも、富山の置かれた状況のメタファーのように感じます。
一人でラジオ番組に宛ててネタを送っているだけだった富山が、ラジオをきっかけに人とのつながりをつくっていきます。応援したくなります。たまりません。
ラジオを聞きながら創作する人必読の本です
ずっと共感しながら読みましたよ。ラジオや創作について熱く語られますが、最終的には富山の成長の物語として幕を閉じるので、読み終えたあととても晴れやかな気持ちになれます。これから訪れる秋の夜長、ラジオのお供にいかがでしょうか?
ではまたー