【読書感想】「ドラゴンの塔」

こんにちは、りとです。

「ダンディだ」とか「紹介が上手い」とか褒めてもらえるのが嬉しいので、今日も調子に乗って最近読んだ小説の感想を書きますよー。

今回読んだのはナオミ・ノヴィクさん著の「ドラゴンの塔」です。上下巻あります。

ドラゴンの塔 上巻 魔女の娘

ドラゴンの塔 上巻 魔女の娘

 
ドラゴンの塔 下巻 森の秘密

ドラゴンの塔 下巻 森の秘密

 

こんな要素が好物の人は楽しめると思います

・中世ファンタジー

・魔法使いの師弟モノ

・ 健気な女の子と超越した力を持った人外(?)の恋

冒頭のあらすじ

序盤の話を書くので一切のネタバレを禁じてらっしゃるかたは以下読まないようにお願いしますね。

ファンタジーな臭いがプンプンするとある谷間の村からお話は始まります。この一帯は、ドラゴンと呼ばれている100年以上生きているという噂がある魔法使いが領主として君臨しています。

近隣には〈森〉が広がっていて、〈森〉は隙をみては人間の心に入り込み、人を喰らおうとしています。ドラゴンは〈森〉から災いが迫ってくると人々を守ります。

ドラゴンは感謝はされていても尊敬はされていません。

なぜなら、村人との交流は必要最低限しか持たず、普段は塔に引きこもって暮らしている上に、奇妙な風習を広めているからです。

10年に一度、地域に住んでいる17歳の少女を一人選び、10年間塔に召し抱えるのです。

「生贄制度か?」と思わされるのですが、10年たったらその後の人生に困らないような財産を持たせて解放されるので「羨ましい事だ!」という人もいるようです。

でもやはり、17歳から27歳という、恋をして結婚して…という花盛り女盛りをドラゴン一人に独占され、帰ってきた女たちは「彼は手を出さなかったわ」とは言うけれどそれも口封じかもしれず、何より皆人が変わったようになってしまっていて、村に馴染めず出て行ってしまう女たちが多いので、できれば「選ばれたくない」「娘を取られたくない」というのが領民の本音でした。

主人公のアグニシュカは今年17歳です。 そして今年はドラゴンが新しい娘を選ぶ年。

しかし、アグニシュカだけでなく、同い年の娘たちは皆安心して育ってきました。

同じ年に生まれた女の子の中に、カシアという子がいたからです。

彼女は誰もが認める美女で、性格もよく、家事も完璧にこなすというパーフェクト女子だったのです。皆が「次はカシアだろう」と確信していたのです。

しかし、カシアを差し置いて選ばれたのはアグニシュカだったのでした!!

…と、ここまでの話で気になってしまって「続きは自分で読みます!」と思ってくださったありがたい方は今日はこれまでにしておいてください。

引き続き読んでくださる方は、これからアグニシュカが選ばれた理由を書きますんでよろしく。

ドラゴンが娘を選ぶ理由

 

ドラゴンは、別に若い召使いが欲しい変態ではないのです。

魔女の素質がある娘を選び、10年かけて自分の魔力をうまく使えるように、つまり弟子にしていたのです。

上巻のサブタイトルなので、バレバレですが!!

なぜ弟子にするか、それは魔力を持った娘が「森」に捕まると、魔力を悪い使われ方をして、人間たちに甚大な被害を及ぼすからなのです…!!

このお話の面白かったところ

・アグニシュカの成長

冒頭、アグニシュカは「自分は何をやってもダメな鈍臭い娘」と自己分析をしています。しかし、魔力の使い方をドラゴンに習いながら次第に成長していきます。彼女はいつも泥だらけ、生傷だらけの人生を送ってきたのですが、それはドジっ子だからではなく、魔力に引かれた自然の草木が彼女に枝葉を寄せてきてたからだということがわかるんですね。彼女がギフトに気づく瞬間の描写は本当によかったです。

・アグニシュカとカシアの友情

二人はこれまで一緒に大きくなった一番の仲良しです。アグニシュカは幼い頃から「カシアを連れて行かないで!」とドラゴンを憎む一方で「カシアがいるから自分は選ばれない」と安堵して育った後ろめたさがあります。カシアも「私は大丈夫!」と振る舞いながら「どうして私が…」という気持ちを抱きながら成長してます。しかし蓋を開けてみれば、二人の立場はまさかの逆転…。この辺りのくだりとその後の二人の関係がとても丁寧に描かれます。見ものです。

・アグニシュカとドラゴンのラブ

魔法以外の全てに興味のないドラゴンですが、彼とは全く違う方法で魔法にアプローチするアグニシュカに、始めは否定的な態度をとりながらも次第に興味を示し始めます。アグニシュカも冷徹非情なドラゴンを最初は拒絶するのですが、なぜそんな偏屈になってしまったかがわかるにつれて親しみを抱き始めます。

「このできそこない!」「このロクデナシ!」と言い合う二人が次第に心を通わせていく姿はニヤニヤが止まりません!!

「森」の存在

てなわけで面白いお話です。

そして物語上とても重要なのが「森」の存在ですよ。まるで、自然が人間に牙を向いているような描かれ方で、それは自然災害が大きな被害を出している現代社会を思い返さずにはいられませんでした。

さらに「森」という脅威がありながら、しっかりと貴族同士の勢力争い、隣国との戦争など、生々しい政治情勢の話も描かれていて、それがいよいよ「地中温暖化だ」「異常気象だ」といっても人間が引き起こした人間にとって困った事なだけで、地球規模で言えば大した事はないっていうぼくらの置かれてる状況を皮肉ってるんだろうなー、とか思わされずにはいられないおはなしでした。

よければぜひ!

お付き合い、ありがとうございました!