こんにちは、りとという者です。
今日はタイトル通りかなり濃厚な小説を読み終えたので感想を書きます!
木嶋佳苗事件を下敷きにした「BUTTER」
いつも通り核心に触れない程度のあらすじを書きます。
週刊誌記者の里佳さんは、私生活には脇目も振らずバリバリ働くキャリアウーマンで、「女性初のデスクになるのでは!?」と噂されてるアラサー女子です。彼女が最近注目しているのが、交際していた3人の男性が次々と謎の死を遂げ、結婚詐欺と殺人の容疑で逮捕された梶井真奈子でした。
梶井は、高校卒業後に上京し愛人業を生業としていた里佳さんと同世代の女性なのですが、世間一般で言うところの「美人」とはかけ離れた、いわゆるふくよかな体型で、世間から「なんであんな女に!?」と言われています。
…と、ここまで書くと「あ、これは木嶋佳苗事件をモチーフにしているな!?」と思われる方も多いと思います。
ぼくもそう思いまして、以前「グリコ・森永事件」をモチーフにした「罪の声」という本がものすごく面白かったことを思い出し、ついふらふらと手にとってしまった本でした。
あ、「罪の声」について書いた記事はこちらっす。
数ページ読んで「BUTTER」の著者が柚木麻子さんだと気がつきました、この方の本に「ナイルパーチの女子会」ってのがあるんですが、これがもう、「女子会」のダークサイドを見事に書き切った本でして、SAN値をガリガリ削られるのに続きが気になって読むのをやめられないという恐ろしい本だったのですね。
あ、「ナイルパーチの女子会」について書いた記事はこちらっす。
そのことに気がついてから「BUTTER」も「やばいなー」って思いながら読み続けたのですが、やばかったです。
木嶋佳苗事件の世間での関心となった要素だけが描かれます
物語は事件の真相には到達しません。事件のあらすじもかなり違うので「木嶋佳苗じけんってこうだったのかー」って思ってしまうと危ういですし「事実と違う!」っていうのも違う本です。
「木嶋佳苗事件がなんで話題になったか?」っていう「世間の目」に重点が置かれるんですね。
つまり「美人じゃない女に何で男は騙されたのか!?」ってところです。世間の女性に対する目と、その目に翻弄される女性の生き苦しさがテーマだと思いました。
物語中、里佳さんは拘留中の梶井に取材を申し込みます。梶井は、取材に応じる条件として、いろいろな課題を里佳さんに出すのです。内容は「自由に食事ができない私の代わりに、私が言うものを食べて来て、感想を教えて頂戴」ってことなのですが、仕事一辺倒でストイックだった里佳さんは徐々に太り始めます。
「太り始める」といっても、もともと細かった里佳さんは、標準体重になってくだけなのですが、それでも周りの同僚や恋人には「太った?」って言われはじめます。
ここがこの本の肝だと思いました。
世間、とくに男性は女性に対して「男女平等」とか言っておきながら、美しく、清楚で、ひかえめで、男を支え、セクシーで、とたくさんのことを望みます。「世間はどれだけ努力をしても私たちに合格点をあたえない」なんてフレーズも出てきます。
対して梶井は、「世間は女性に求めるものを間違っている」と言います。 男を赦し、包み、肯定し、安心させ、決して凌駕しないことが大事だと言うのです。
そして里佳さんは混乱していきます。
この辺り、女性の方は共感する部分がめちゃくちゃあるんじゃないでしょうか?
男も読んだほうがいい
その一方で、梶井の語る男性観はぼくらにチクチクと刺さってきます。
梶井に関わって死んだ男性たちに共通するのは、「まったくお前は俺がいないとダメだなんだから…」と上目線になりたい一方で心の底では「女に愛されてないと不幸だ」と思っている、もっと言えば「俺のことをわかってくれて、ご飯も作ってくれる女がいないと人生最悪だ」って思ってるってところです。
めっちゃごめんなさい!ってなります。
先の読めない展開
里佳さんは、梶井の条件をクリアしながら独占インタビューの権利を勝ち取り、いよいよ社内の出世コースに乗って行きます。しかしその一方で、どこか梶井的思考回路も形成されていきます。そして、私生活にも影響が出てきて、友人や恋人も巻きこんでいき…というあたりが前半で、後半は怒涛の展開になっていくのですが、そこはぜひ読んでもらいたいです!
ここまで読んでくださってありがとうございました!ではっ