【読書感想】『ファーストラヴ』女性に対する「視線」について考えた

ぼくはイラストを描いてブログにあげたりしてるわけですが、どうしても女の子を描くことが多くなります。

女の子を描くと画面が華やいで描いてて楽しいし、見てくださった方に「かわいい!」とお褒めのお言葉をたくさん頂けるからなんですね。

若い子の間で流行ってるTik Tokとかも女の子が出てくる方がバズるそうですが、これは今に始まったことではなくて、例えば「名画」ってとっさに言われて思い出す作品って「モナリザ」「真珠の耳飾りの少女」「グランドオダリスク」「見返り美人」と女性率が高いのではないでしょうか?(あ、「見返り美人」は女形でしたね!?)

こういうのって「美術的価値」の裏に「性」が巧妙に隠されてたりするわけで、そんな仕掛けの面白さも作品の良さになってたりする訳ですが、そんな「女性に対して向ける視線」についてめっちゃ考えさせられた小説、島本理生さん著の『ファーストラヴ』を読み終えたので感想書こうと思います。

以後、あらすじ紹介程度のネタバレがありますのでお気をつけくださいね。

ファーストラヴ

ファーストラヴ

 

美人女子大生の父親殺害事件

「聖山環菜」さんというアナウンサー志望の女子大生が、とあるテレビ局の入社試験の帰りに父親を刺殺し、血だらけで河川敷を歩いてるところを拘束されます。

彼女は警察に「動機はあなたたちが見つけてください」と挑発的な物言いをします。

また、殺された環菜さんの父親は、美しい女性を描くことで定評のある高名な画家でもありました。

このスキャンダラスな事件にマスコミは大いに食いつきます。

環菜さんは、なぜ父親を殺したのか?

主人公の「真壁由紀」さんは臨床心理士の30代の女性です。

最近はコメンテーターとしてテレビに出演することもあるバリバリのキャリアウーマンさんで、出版社から「最近話題の美人女子大生殺人事件のルポを書きませんか?」と持ちかけられます。

こうして由紀さんは、環菜さんと面会を繰り返しながら彼女の内面や過去を掘っていくことになります。

その中で、環菜さんの中の「闇」が次第に明かされていくのですが…。

…てな話なのですが、由紀さんは由紀さんでなかなかに複雑な過去を抱えています。

夫の我聞さんとは授かり婚で10歳になる子どもがいます。

我聞さんは、将来を有望視されたカメラマンだったのですが、由紀さんの妊娠がわかると自分のキャリア全てを捨てて家庭を築くことを選んでくれた相手でした。

また、我聞さんには血の繋がっていない「迦葉」くんという弟がいるのですが、由紀さんと迦葉くんはどうやら我聞さんと知り合う前に何かしら人に言えない2人だけの秘密の関係があったようです。

そのせいで由紀さんと迦葉くんは今でもギクシャクしてるのですが、なんと今回迦葉くんが環菜さんの国選弁護人となってしまったので、2人は互いのビジネスのために協力する羽目になってしまいます。

仕事のこと、迦葉くんのことで由紀さんは我聞さんに負い目を感じています。

しかし、こんなことになってしまったのには、幼い頃の由紀さんの家庭環境にも問題があったりで…。

「男性に消費される女性」像

環菜さんの事件の真相を追いながら、由紀さんは自分の過去を棚卸ししていく展開になるのですが、環菜さん・由紀さん2人とも「男からの性的な視線」に対するトラウマを抱えてるんですね。

これは、読んでて男としては本当に申し訳ない気持ちになりました。

「どうしても目が行く」「男ってそういうものだから!」みたいなそんな笑い話では済まされない問題だよな、と反省させられます。

殺された環菜さんのお父さんが画家で、ぼくも絵を描くから余計にグイグイ来ました。

読み終わった人同士で意見交換をしたくなるような、そんな社会派物語です。

エンターテイメント性も抜群

難しいテーマを取り扱ってる一方で、由紀さんの地道な取材から事件の真相が少しずつ明らかになって行く様は、まるでミステリー小説のようでした。

また、ラストには白熱の法廷劇もあります。

さらに若かりし頃の由紀さん、我聞さん、迦葉くんのほろ苦いラブストーリーも必読です。

そういう意味では、魅力と読み応え抜群の高コスパ本だと思いました。

今年はなんか当たりを引く率が高いぞ!!

そう言えば

「罪を犯した女性のルポを描くためにライターである女性が拘置所に通う」って構図の小説として以前「BUTTER」も読んだのですが、どちらも「全男必読だ!」って思います。

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