【読書感想】『三体』その想像力に驚かされた…!

今日は各方面で「面白い!面白い!!」と絶賛されている小説「三体」を読み終えたので感想を書こうと思います。

三体

三体

  • 作者: 劉慈欣,立原透耶,大森望,光吉さくら,ワンチャイ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: ハードカバー
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 はじめにお断りしなければならないことがあって、この小説は刺さる人にはぶっ刺さるSF小説なのですが、その面白さを伝えるためには、ぼくがいつもやってる「あらすじ紹介程度のネタバレ」でも実際に手にとって読む時の楽しさをいくらか損なう恐れがあります。

もう読むつもりで一切ネタバレNGな方は、以下は読まないでくださいね!

はじめ敷居が高めだけど、それ超えると傑作が待っていた!

お話は、文化大革命時代の中国から始まります。

このお話の主なストーリーテラーとなる2人の登場人物の1人、葉文潔(イエ・ウェンジエ)さんのお父さんである、物理学者で大学教員の葉哲泰(イエ・ジョータイ)さんが暴徒と化した学生たちに囲まれリンチの上に殺されるシーンから始まります。

自らも天文学を専攻していた若き学者先生の葉文潔(イエ・ウェンジエ)は目の前で惨たらしく殺される父の姿を見て、果てしない絶望を感じます。

その後も、生きるか死ぬかのギリギリの人生を送る葉文潔さんは、色々な人との巡り合わせから、とある謎の研究施設に身を寄せることになります。

数十年後、物語のストーリーテラーとなるもう1人の人物である、ナノテク物理学研究者である汪淼(ワン・ミャオ)さんは、軍の要請によりとある作戦会議に出頭します。

どうやら、学者達の連続自殺が起きているらしく、その件について、謎の学術団体「科学フロンティア」に潜入調査をしてほしいと汪淼さんは依頼されます。
確かに学者の連続自殺は事件ですが、軍はこの件を「戦争」と呼びます。

何故なのか?

平和な現代社会において、戦争の相手とは一体誰なのか?

ここで汪淼さんは、自殺した科学者リストの中に葉文潔さんの娘さんで、宇宙研究者である「楊冬(ヤンドン)」の名前を発見します。
聡明な美女で、汪淼さんも憧れのようなものを抱いていた様子でした。
ちなみに、汪淼さんは妻子持ちのアラフォーくらいなイメージです。
あと、書き忘れましたが葉文潔さんは女性です。

楊冬さんの自殺にショックを受けながらも、あまり捜査に乗り気でない汪淼さん。

しかし、この会議の後、汪淼さんは彼にしか見えない謎の数字の列が視界に現れるようになります。

その数字はどうやら何かのカウントダウンのようなんです。

一体何を刻んでいるものか…?

と、このあたりまで読めば、もう物語にズッポリなのですが、そこまでには、葉文潔さんと汪淼さんに関わるたくさんの魅力的な登場人物たちの腹に一物持った言動と、それに伴う複雑な群像劇が描かれます。

しかもこれが「中国名の学者たちによる専門用語飛び交う会話」というハードルの高さなんですよね!

これが本当に苦しくて、ぼくはなんども行ったり来たりしながら、登場人物の確認をしました。

でも、それでも興味があれば頑張って読んでみてほしい!

さらに物語をややこしくするのが、汪淼さんが事件の謎を追っていく中で出会うオンラインゲーム「三体」です。

謎のオンラインゲーム

汪淼さんは、謎を解明させるために、三体世界にフルダイブします。

三体には、ヘッドマウントディスプレイを装着してログインするので、完全にソードアートオンラインみたいな感じです。

このログイン先が、とても奇妙な世界なのですが、物語の謎に密接に絡んでるわけなんですね。

ここでは、歴史上の科学者や哲学者たちに模した登場人物たちによって、地球ではないどこかの惑星の過酷な環境に抗う物語が描かれます。

このゲームは一体なんなのか?

カウントダウンは?

科学者たちの連続自殺の真相は?

そして葉文潔さんと出会う汪淼さん。

その時、この物語のスケールは宇宙規模に拡大するんです。

このとの発端が文化大革命

あらすじはこの辺りにして、あんまり中国文化に詳しくないぼく程度の人間からすると物語の始まりが「文化大革命」ってとこにまず驚かされます。

しかも「これ以上発展できない人類の象徴」として使われるんですよ。

「そんな表現しても良いんだ!?」って思いました。

さらに驚かされるのが、この小説が中国で発表されたのが2006年だってことです。

思ってる以上に、今の中国では表現が自由になっているのかもしれません。

表現が自由ってことは、文化が豊かに成熟していることの証の一つだと思うんですよ。

その後、日本は経済大国2位の座を中国に明け渡すわけですが「そりゃそうだわな」って思わざるを得ません。

国内だけで「日本すごい!」とか連呼してる場合じゃないんじゃないかな〜?なんてつい思っちゃいます。

もう少し、日本も表現が自由になってもいいんじゃないかな〜、と願わずにはいられない物語でした。