ブログ友達のがっちゃんさんからいただいた質問にお答えしたのをきっかけに「ぼくの答えられる範囲でよければお絵かきにまつわる質問にお答えします〜」とアナウンスしたところ、阿豆らいち (id:AzuLitchi) さんからガチな質問をいただいてしまいました。
狩野派、琳派、土佐派あたりの日本画の美術史をわかりやすく図解していただけないかなーと…(;´∀`)
— 阿豆らいち (@AzuLitchi) 2019年4月2日
実は日本美術史に疎いので。
この質問に対し、前回は「土佐派」についてのお話をさせていただきました。
さらっと復習しますと、遣唐使で唐と行き来してたころ、大陸から入ってきてた絵を「唐絵」と言ったのに対し、唐絵を参考にしながらも日本独自の画風を確立し「大和絵」と呼び、大和絵の画風をもとに朝廷お抱えの絵師集団となったのが「土佐派」だというお話でした。
「ちょっとマニアックな話になってしまったかな…?」と心配してたのですが、いただいた皆さんからの暖かなコメントを見て安心したので後半も張り切って書きます!
まずは「狩野派」のお話です!
遣唐使廃止以降、自分たちの文化を持ったのは高貴な方々だけではなかったんですね。
特に室町時代は「町民文化が花開いた時代」とか社会の授業で習ったと思います。
「土佐派」が宮仕えで絵を描くいわば「公務員」みたいなもの(言ってみれば「お絵かき庁」?)なのに対し、狩野派は室町時代に「狩野正信」さんが家族経営で始めた「デザイン会社」です。
狩野派の「上お得意様」は将軍・大名といった幕府の権力者たちで、狩野派の最盛期だった時代の絵師「狩野永徳」は豊臣秀吉のお気に入り絵師さんでした。
優雅で雅な反面、若干古風な土佐派の絵に比べて、武士が好みそうな「派手めでアグレッシブな画風のものが多いな」っていうのが個人的な印象です。
狩野永徳といえば「唐獅子図」がカッコいいっすね!炎のような毛並みが厨二心をくすぐります!
屏風や襖絵といった、室内のインテリアの一種で、主の威厳を演出するような絵柄が多い気がします。
こんな感じで、偉い人が後ろに背負うことで「俺様は強いんだぞ感」を演出できるようになってるわけです。
デジタルがなかった時代のARって感じがして、楽しいですよね!
美術館とかで屏風絵や襖絵があって、周りに人がいなかったら前に立って遊ぶと楽しいと思います。(大きな声を出しすぎて叱られても責任は負いかねます)
土佐派も琳派も、名だたる絵師は弟子を抱えて分業で仕事をし、その中から次代のリーダーを育てていくという「アシスタントを抱えた漫画家さん」のような体制で作品を制作しました。
弟子の中からデビューが決まっていくのも、なんか漫画家さんっぽいです。
土佐派も狩野派も江戸時代まで続きますが、武士が政権を振るうようになるにつれ、武士をパトロンとする狩野派の方が勢力を増して行ったような図式になります。
「琳派」はちょっと特殊です
琳派の琳は「尾形光琳」の琳です。
尾形光琳は江戸時代中期の人で、元々は呉服屋の若旦那でした。
30歳まで親のすねをかじって好き勝手してたそうですが、30歳の時に父親が死に、店を継ぎます。
しかしそれまでの遊び癖が抜けず、40歳の時に店を潰してしまい、その後絵で食うことを考えます。
光琳を見てると「教育環境は大事なんだな」って思います。
きっと40歳になるまで、豊かな財力で最上級の文化に触れて目と感性をを肥やしてたんだろうなって思うんですよ。
そうじゃなきゃ、40歳から絵で成功するとは思えません。
そんな光琳が大いにリスペクトしたのが「俵屋宗達」という絵師なのですが、宗達は光琳より100年近く前の時代の江戸前期の人で、詳しい記録はあまり残ってないという謎の絵師です。
宗達の有名な作品といえば「風神雷神図屏風」なのですが「光琳が模写してるから」なんですね。
「風神雷神の絵ってどんなの?」って聞かれると「向かい合う風神様と雷神様の絵」を誰もが想像できると思うのですが、実は宗達バージョンと光琳バージョンがあります。
「風神雷神図」で画像検索すると、宗達と光琳の(と、パロディ)がごちゃ混ぜで出て来ます。
宗達バージョンは、画面からはみ出るように描かれてることで上空に宇宙を感じて「絵画的」なのですが、光琳バージョンは画面内に全てがバランスよく収まっているので「デザイン的」だと言われています。
そして光琳の没後100年ほどたった江戸後期に、光琳の絵をリスペクトした「酒井抱一」という絵師が現れます。
この3人は生きた時代が全く違うので、師弟関係ではなかったみたいですが、この「宗達→光琳→抱一」ラインと関係する絵師をまとめて「琳派」と呼ぶんです。
ぼくは宗達の迫力ある風神雷神が一番好きです。帯の舞い方と周りの薄墨の感じがカッコいいんですよねぇ〜。
会ったことがないのに、作品だけで技が受け継がれていく琳派って「ロマンだな」って思います。
…と、ざっくりまとめてみましたが、いかがでしょう?
ぼくは日本美術の、大胆な線と色使いでババンと見せる感じがすごく好きです。
ぼくが魅力に感じるところが伝わり、らいちさんの求めていた情報があったことを祈りつつ今回は終わろうと思います。
そして、お付き合いくださった皆さんも楽しんでいただけたら最高です。