今日は読後に余韻で頭ぐるぐるになってしまった小説の話をしよーと思います。
宮本輝さん著の『草花たちの静かな誓い』というお話です。
「なんかフランス映画みたいだな」って思った
完全に独断と偏見なのですが、ここでぼくのいう「フランス映画」って、ハリウッドとかに比べるとアクションが少なく、どこか物静かで、でも美しい景色が続いて、ホロリとしたりハッとするような気づきがあったり…って感じです。
眠い時に見ると寝ちゃいそうな。
また詩や抽象画を読み解くように自分から作品に触れに行かないと「訳わからん」になりそうな、そーいう物語でした。
それが読後の余韻に続いてるんでしょうねきっと。
以下、あらすじ紹介程度のネタバレありますんでお気をつけくださいね。
主人公の「弦矢」くんは、子どもの頃から実の両親より親身にしてくれてた叔母の「菊枝」さんが、旅先の温泉宿で急死した連絡を受けます。
独り身の菊枝おばさんは、何かあった際の連絡先を弦矢くんにしてたのです。
そして、アメリカ在住の大金持ちの菊枝おばさんの顧問弁護士だった「スーザン」という女性から「至急あなたに会わなくてはいけない」と言われた弦矢は渡米します。
菊枝さんは、自分にもしものことがあった際は4200万ドルの遺産全てを弦矢に譲ると遺書に書き残していたのです。
困惑する弦矢くんに、スーザンから追い討ちのようなおばさんからのメッセージが伝えられます。
「行方不明になった娘のレイラを探して欲しい。もし見つかったら遺産の70パーセントはレイラに渡して欲しい。」
スーザン曰く、これは公式な遺言状とすることはできないので、お願いになるとのことでした。
菊枝おばさんには1年前膵臓癌で他界した「アラン」という旦那さんがいて、2人の間には弦矢と同い年の「レイラ」という娘がいたことは知っていました。
その子は、6歳の時に白血病で死んだと聞かされていました。
しかし本当は、6歳のある日ショッピングモールに買い物に行った際にはぐれてしまい、以後27年間行方不明だったというのです。
いよいよ混乱する弦矢くん。
スーザンには「頼まれたから伝えるが、当時も菊枝はあらゆる手を尽くしてレイラを捜索している。今更何かしても時間と金の無駄になるだけだ。」と言われます。
それでも弦矢くんは、レイラを探すことにします。
とはいえ、日本から突然ロサンゼルスにやってきた弦矢くんに、年間5万人の子どもが行方不明になる国で27年前に行方不明になったこどもを探す術はありません。
そこで凄腕探偵の「ニコ」という男を雇います。
そして物語は、ニコからの連絡を待ちながら菊枝おばさんの豪邸で身辺整理を進めていく展開になります。
それはもう、ひたすらに菊枝さんの人生に想いを馳せるお話です。
保守的な家庭を飛び出してアメリカの富豪の嫁になった菊枝さんは、親族との関係もボロボロで、弦矢くんだけが特別でした。
そんなアメリカで授かった子どもも6歳で行方不明。
それからも懸命に生きただろうに、旦那さんを癌で早くに亡くし、久々の里帰りの旅の道中で今度は自分も心臓発作。
主な物語の舞台となる菊枝さんの豪邸は、ランチョ・パロス・ヴァーデスという、成功者のみが住むことができるアメリカの一等地にあります。
Googleで画像検索してみましたが凄い場所です。
そんな場所に4200万ドルの資産を築いているのに、菊枝さんの人生はなんて寂しいんだろうって思わずにはいられません。
「幸せは金じゃないな」って思ってしまいます。
金がなくてもそう思ってしまいます。
むしろ金がないからかもしれません。
金がないのは、言い過ぎですね。
ちょっとあります。
「贅沢しなければ不自由しない」くらいが、人生は1番幸せなのかもしれません。
弦矢くんは主人を失った豪邸で、数少ない菊枝さんと交流のあった人たちと人間関係を築いたり、自分のことや、レイラのことについて色々と考えます。
そんな中で、レイラにつながるヒントを見つけたりもします。
ひょっとしたら、菊枝おばさんはわざとわかるように残したんじゃないか?と思ったりもします。
果たしてレイラは見つかるのか?
遺産を弦矢くんはどうするのか?
刺さる人にはド刺さりする、そんなお話でした。