恩田陸さん著の小説『鈍色幻視行』を読みました。
以下、核心には触れませんがあらすじ紹介程度のネタバレがあります。
主人公というか、ストーリーテラーになるのは蕗谷梢さんという40代の小説家の女性と、夫で弁護士の雅春さんの2人です。
そして、飯合梓という作家が残した「夜果つるところ」という小説が物語の軸になります。
「夜果つるところ」はこれまで3回映像化の話が出たのですが、その度に関係者が死んでしまい、3回とも頓挫してしまっている「いわくつき」の小説で、作者の飯合梓も亡くなったとされています。
梢さんは、雅春さんにアジアを巡る豪華客船の旅に誘われます。
今回、乗客メンバーに、飯合梓と夜果つるところに強い思い入れを抱いている人が大勢乗ってくるので、その人たちにインタビューをして、ドキュメンタリーをかいてみてはどうだと提案され、承諾したのでした。
客船に乗っていたのは、最初の映画化の時の監督、2度目の映画化の時のプロデューサー、小説の文庫化を手がけた編集者、業界トップの映画評論家、熱烈な飯合梓ファンの姉妹漫画家ユニット、と曲者揃いです。
そして実は、共に再婚同士の梢さんと雅春さんでしたが、雅春さんの前妻は、3度目のドラマ化の際に脚本を書き上げた後に自殺した脚本家だということを、梢さんに話しておらず、でも梢さんはそのことを知っているのでした。
そんなメンバーが2週間の間、海上で寝食を共にして、どんな物語を紡ぐのか!?
ってお話なんです。
もぉなんか、どんな物語にも発展可能な設定じゃないですか。
おかげで分厚い本なのに、ずっと夢中で読んでいたし、終わりが近づくと勿体なく感じて、読み終えたら達成感に浸ってしまえるすごい内容でした。
これ以上は何書いてもネタバレになるのでそろそろやめておこうと思います。
それにしても、夜果つるところの作者である飯合梓の不気味さですよ。
何人か「会ったことがある」という登場人物がいるのですが、みんな印象が違うのです。
唯一共通してるのが「幅広の帽子をかぶっていた」ということだけで、それがなんだかとっても薄気味悪いのです。
夏に旅先で読むのにもってこいな小説です。