今日は道尾秀介さん著の小説『スケルトン・キー』を読み終えたので感想書こうと思います!
核心には触れませんがあらすじ紹介程度のネタバレがありますのでお気をつけくださいね。
するっと読めるサイコホラーって印象でした!
物心つく前から児童養護施設で育った主人公「坂木錠也」くんの視点で描かれる物語です。
彼は、同じ施設にいた「ひかりさん」という淡い想いを抱いていた年上の女の子にある時「あなたみたいな人のことをサイコパスっていうのよ。」と言われます。
錠也くんはもともと心拍数が低く、「恐怖」を感じることがないのです。
高校を卒業し施設を出た錠也くんは、どんな局面でも恐怖を感じず冷静に行動できることを買われて、雑誌社でいろんな現場のスクープを記録して報酬をもらうバイトをして生計を立てていました。
錠也くんのお母さんは、家族のいる男との不倫の末に妊娠し、1人で錠也くんを産もうと住み込みで働けるスナックで身重の体を引きずりながら客に勧められる酒やタバコを断れずに仕事をしてたある日、突然殴り込んできた強盗のショットガンを受け、最後の力を振り絞って錠也くんを産み落として死にました。
地方の小さなスナックで10数年前に起きた事件なので、今となっては犯人が今どうなってるかわかりません。
錠也くんはそれでよかったと思っています。
なぜなら、もし犯人に手が届いてしまったら自分は何をしでかすかわからないと思ってるからです。
ある時、施設で一番の友人だった「うどん(あだ名です)」から久々の連絡があり、2人は施設を出て以来初めての再開を果たします。
うどんは、長年刑務所にいた父親が出所してきて現在一緒に暮らしているというのです。
そして、最近初めて父親の罪状を知ったうどんは「錠也のお母さんを殺したのはおれの親父なんじゃないか」と告白します。
錠也くんは「別人だよ」と言ってうどんと別れます。
その数日後、錠也くんはうどんの家に赴くのでした…。
前半の鬱展開から中盤のトリックがやばい
こんな感じで、冒頭は暗ーい感じで始まるのですが、あまり感情の起伏のない錠也くんの一人称で進むためするする読めてしまうんです。
そして「これからとんでもないことが起きるんじゃないか!?」って感じがどんどん募っていくんです。で、特に読み手が焦らさせることなく「とんでもないこと」が起きます。しかも、いくつか。
相変わらず冷静な錠也くんに対して、こっちが勝手に「ああ…」ってSAN値を削られていくわけです。するする読めるから。
正直「読むのやめようかな?」って思った瞬間があったのですが、その直後に「マジで!?」ってことが起こるんです。
あとはその驚きをペースメーカーに最後まで一気読みでした。
あ、でもこの「マジで!?」は、例えるなら「運命の人だと思ってた相手が前世では宿命の敵だった」くらいのデカいヤマなので、人によったら白けるかもしれません。
ぼくは「小説ならではの仕掛け」って感じられとても面白かったです。
好みの分かれるところかもしれませんね!
コンビニ人間っぽいかもしれない
ぼくは以前読んだ『コンビニ人間』のような印象を受けました。
ジャンルは違いますが「サイコパスな主人公の一人称」ってところが共通してます。
医療とか精神分析とか、ぼくはそんなに知識がないので間違いがあってはいけないのですが、考え方が人と違うために「え!?」ってことを淡々とできてしまうっ人っていうのはこんなに心をザワザワさせるんだなぁって思いました。
でも、そんな自分のことを理解していて、本人たちがなんとかしようとしているってことも忘れちゃだめだなー、とも同時に思わされました。
また、サイコパスだけでなく「施設で育った子ども」に対する社会の視線みたいなものも、クールに描写されてるように感じました。
『スケルトン・キー』も『コンビニ人間』も小説として楽しませてくれながら社会の偏見とか色眼鏡について考えさせてくれるお話でオススメです!