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【読書感想】『歪んだ波紋』誤報がテーマの社会派小説

今日は塩田武士さん著の小説『歪んだ波紋』を読んだ感想を書きます。

いつも通りのあらすじ紹介程度のネタバレがありますのでお気をつけください!

歪んだ波紋

歪んだ波紋

 

 「誤報」にまつわる5つの短編が、最後に1つになるお話でした。

昨今のマスメディアの報道に対してあんまりいい印象を持ってない方なんかはグッと惹き込まれる内容なのではないかなー?って思いました。

最初の話「黒い依頼」では、とある地方新聞社が舞台で、地元で起きたひき逃げ事件を追う話なのですが、主人公の記者さんのところに「現場から逃走した車が被害宅の駐車場に停まっていた」という情報があり、被害者の妻に突撃する話になります。

次の話「共犯者」は、新聞社を定年退職した主人公の元に、かつての同僚が自殺した知らせが入り、彼の遺品から現役時代2人で追った事件を彼がいまだに引きずっていたことを知り、真相を追う話です。

3つ目の話「ゼロの影」は、男社会のパワハラに疲れてた時期に同僚との結婚をきっかけに新聞社を辞めた女性の主人公が、目の前で現行犯逮捕された盗撮犯を3日後に娘の保育園のお迎えで目撃し「3日しか経ってないし新聞にも載ってない。なぜ!?」と、新聞社のツテを使って独自に盗撮犯を追う話となります。

…と、ここまで書くと新聞社が舞台となりながら、なんとなーく緩く各話が繋がってることがお分りいただけますでしょうか?

これが、後の2つの話を経て、最後には1つの物語になって「今の社会はこうなってます。さて、あなたはどうしますか?」と読み手に問いを突きつけていく構成になっていました。

すごいです。

「事実」は売れない

「誤報」がテーマな時点でなんとなく想像がつくかと思われますが、この小説で繰り返し描かれるのは、地道な取材を積み重ねた報道記事より有名芸能人の不倫のような話題の方が儲かるし、そんな話は誤報であっても事実より儲かるというお話です。

物語の中には、全国誌から地方誌に移った人や、新聞社を辞めてネットメディアの会社をつくった人なんかが登場します。

それぞれが、記者としての矜持を胸に、自分が誇れる記事を書きたいと思いながら、売り上げやノルマ、大きな歯車に押しつぶされていく様が描かれるんですね。

テレビとか大手メディアを非難するだけではいけない

これは、あくまで「個人の好みの問題だと思う」とお断りしてお話しますが、ぼくは「報道バラエティ」と言われる番組の「この事件は悲しいですね、みなさんそう思いますよね?」とか「この犯人は許せませんよね、みなさんそう思いますよね?」とか「これはいい取り組みですよね、みなさんそう思いますよね?」みたいな、こちらの感情にまで訴えてくる構成があまり得意ではないんですね。

似たような構造で「何か大きな力」が働いてるような気がする雑誌や新聞からもぼくらはどんどん離れています。

で「若者の○○離れ」なんて言葉も合間って「自分も若者のひとりか!」なんて年甲斐もなくはしゃいでた節があるのですが、こうなった原因をつくっちゃったのは、ぼくらが原因なのかもしれないって思わされました。

大手メディアに限らず、ネットのニュース記事なんかも、実は見出しだけ見て本文読まずにSNSにコメント残すユーザーはすごく多いのだそうです。

そして、間違った解釈のまま拡散する訳ですが、勘違いはどんどん拡散していくのに訂正は拡散されないそうです。

「そうです」とか言いながら、ぼく自身「やってない」なんて確証はないんです。

誰だって「事実」を都合よく切り取って自分にとって気持ちのいい「真実」を目にしたいわけで、今ではそれを個人レベルでやっていて、今更「テレビが面白くない」だなんてぼくらはもう言えないのかもしれないな、ってちょっと恐ろしくなるお話でした。

この小説のラストでぼくらに課せられる課題はすごく大きいです。

塩田武士さんの小説は『罪の声』でもめっちゃ考えさせられました。こちらもめっちゃオススメです!

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