日本画とぼくの付かず離れずな関係
たまにブログに描いてるとおりぼくは日本画を描いたりもするんですね。
別に日本画家でもなんでもないので完全に趣味でやってるのですが、10代の頃の頑張ってた自分に愛想尽かされないために年に1枚F50号の絵を描くことにしています。
F50号っていうのはキャンバスのサイズのことなのですが1167mm x 909mmです。
「そんな大きな絵が毎年増えてくなんてどんな大きな家なんだ!?」って思われるかもしれませんがここが絵のいいところで、木枠のキャンバスに紙を貼って描いて(「水張り」って言います)、描き終えたらキャンバスから外して重ねて置いとけるので、そんなに場所はいらないんですよね。
その点、彫刻やってる知人なんかは大変そうです…。
絵でよかった。
麻紙
日本画の紙は「麻紙」といって、名前の通り麻の紙なんです。
麻を織ってつくられているため、とても丈夫です。
日本画は「岩絵の具」という砂みたいな粉みたいな「顔料」を「膠」という動物の油で画面に固着させて絵をつくります。
絵の具の乗せ方はなんとなく道路を舗装していくようなイメージがあり、そのための土台はやっぱ丈夫な方がいいんだろうなって思ったりします。
…と描くとすごく特殊なことをしてるように感じますが、膠の代わりにゴムの木の油を使うと「油彩画」と呼ばれるので、そういう意味ではそう差はないと言えるかもしれません。
F50号サイズがとれる麻紙のサイズのことを「3x6版」と言います。
「さぶろくばん」と読みます。
ぼくはここ数年麻紙の値段が高騰を続けていることでちょっと泣きそうになってます。
ドーサ引き
麻紙は、何も下準備をせず絵の具を乗せようとするとめちゃくちゃ滲みます。
この滲みを使って水墨画なんかをすることもありますが、滲まないようにするには「ドーサ引き」という作業が必要になります。
麻紙に「ドーサ」と呼ばれる液体を染み込ませて目止めをするんですね。
ドーサは漢字で「土砂」と書いたり「礬水」と書いたりします。
「ドーサ」じゃなくて「ドウサ」と書かれてたりもします。
「ドーサ」は何かっていうと「膠と擦ったミョウバンをぬるま湯でといたもの」です。
ミョウバンは乳鉢でゴリゴリやります。
これを麻紙の裏側にまんべんなく塗るんです。
そして乾かします。
乾いたら表替えしてまた塗ります。
この時、ドーサの滲みができなければドーサ引きは完了。
しかし、どこかにドーサの滲みができたら、もう1度乾かしてまた裏からドーサを引きます。
沁みて下に敷いてる毛布が透けてるところがドーサのきいてない箇所です。
また乾かしてドーサを引いてみて…を、ドーサの滲みができなくなるまで繰り返します。
面倒臭いので、麻紙はドーサを引いてない「生紙」と「ドーサ引き」の二種類が売られています。
ドーサ引く手間がかかってる分、ドーサ引きの方がお値段高めです。
で、先ほど嘆いていた麻紙のお値段なのですが、ぼくが普段絵の具を買いに行ってる画材屋さんで、3x6版のドーサ引きが最近8000円くらいするんですよ。
ネット通販
そこでここ数年ぼくは、ネットの力を活用してオンラインで麻紙を買っていました。
ぼくが学生時代、先生に「これを買いなさい」と言われていた麻紙は「雲肌麻紙」という高級品なのですが、こんなものはもう手が出せないので最近は「土佐麻紙」を探して買っています。
土佐麻紙は名前の通り、和紙の生産が盛んな高知でつくられてる麻紙です。
個人の感想として、雲肌麻紙とほぼ描き味に差はなく、とても重宝していたのですが、どうやらぼくが通販してたお店が「注文があってから生産する」スタイルに切り替え、在庫を持たないシステムになったようなんです。
後継者不足と客の減少が原因のようです。
以前も一度「麻紙の販売は当面中止します」となってたのですが、復活して安心してた矢先のことでした。
そういえば膠の生産も種類によっては中止されてきています。
日本画は虫の息なのかもしれない、と寂しくなってしまいました。
そんな業界を支えるため、是非とも注文するべきだったのだろうと思いますが、ふとアマゾンで検索かけたら、生紙ですが麻紙がプライム商品で出てきました。
今すぐ描ける時に描きたかったぼくは、つい魔が差してポチってしまったのでした。
日本画は手間もかかるしお金もかかるんですが、あのはんなりとした雰囲気は本当に魅力的です。
興味を持ってくれる人が増えて、職人さんが潤って、単価が安くなってくれたら嬉しいので、
どうですか?日本画やってみませんか??
と皆さんにお伝えしたく、ドーサを乾かしてる合間にこんな記事を書いてみたのでした。
10代の頃の自分のために続けているつもりでしたが、みなさんが社会で必要な知識や常識を身につけている間こんなことばかりしていたぼくだからこそ、続けてないといけないような気もしてきました。
お付き合いありがとうございました!
と、ここまで日本画に興味がある方が読んで「ちょっとやってみようかな?」と思ってくださればいいな、と思いながら書きましたが、バリバリ描かれてる方に読まれるとたいへん恥ずかしい内容になってしまいました!
ご、ご容赦ください!!