さてさて、ここのところ数珠つなぎのように「お絵かきに関する質問」という名のブログのお題をいただいていて、ありがたい限りでございます。
今回は、スーパーおしゃれハウスのMS家の家主であられるmashley (id:mashley_slt)さんこと嫁氏さんからいただいた、こちらの質問にお答えしたいと思います!
今回もめちゃくちゃ楽しいです!狩野派ってなんか強そうなイメージがあったんですが、そうか!武士がパトロンだったからなんですね♪では質問です!現代美術の中で(絵でも彫刻でも小物でも)おすすめありますか?? / “狩野派・琳派・土佐派あたりの日本美術史についてぼ…” https://t.co/yFaNA0CzQP
— mashley (@mashley1203) 2019年4月10日
現代美術かぁー!
好きな作品がいっぱいあるんですよね。
とても1つに絞れそうにないので、そもそもこんなに現代美術を好きになったきっかけの作品を紹介することにします。
デュシャンの『L.H.O.O.Q』
「現代美術」というジャンルは、美術の中でも一見「なんでもあり」「意味不明」「やったもん勝ち」に見える代表格だと思うんですよ。
こういう価値観を確立したのがデュシャンといっても過言ではなくて『L.H.O.O.Q』は彼の1919年の作品なんです。
画像検索してもらえれば一発でできますが「モナリザのコピーに鉛筆でヒゲを付け足した」って作品なのです。
あれ?パイレーツオブカリビアンのオーランド・ブルームみたいになった…
タイトルの『L.H.O.O.Q』は「彼女は下半身が火照ってる」というフランスのエロワードの頭文字で、さらにこの作品についてデュシャンは「モナリザはよく見たら男だったんだよ!」とか言ってます。
しかもこの作品の次に、ヒゲの落書きのないモナリザコピーを発表して『ヒゲを剃ったモナリザ』というタイトルをつけて発表するというオマケ付きです。
学生の時この作品を図版で最初に見たとき「なんてふざけた作品なんだ!」と爆笑しました。
でも、そのあと素晴らしい解説を読んだんです。そして「現代美術ってなんて面白いんだ!」と思わせてくれた作品なんです。
昔のことすぎてソースがもうわからないのですが、ぼくが読んだ解説をぼくなりに解釈すると、こうです。
1、デュシャンはモナリザを描いたダヴィンチを偉大な芸術家として尊敬している。
↓
2、「自分もダヴィンチのような偉大な芸術家になりたい」という思いをモナリザの模写で表現。
↓
3、「そしていつかはダヴィンチを超える芸術家になってやる」という思いを「モナリザの模写に自分らしい要素を付け足す」という行為で表現。
どうでしょうこの三段論法!
そしてそんなリスペクトをごまかすツンデレタイトル!
ぼくは感動してしまったのでした。
デュシャンといえば『泉』の方が有名かな?と思います。
これは、男性用便器にサインをしただけという作品です。
こちらについての解説は結構ネットにもあるのですが、僭越ながらぼくなりにちょっと書きますね。
西洋美術の歴史って、基本的に前の時代の様式の「リスペクト」か「カウンター」かどちらかの繰り返しの歴史って面があるんですね。
「リスペクト」は「こんなすげー表現があったので自分流にアレンジしてこうしてみました!」みたいなやつです。
「カウンター」は「こんな表現オレは認めない!だからあえてこうする!!」です。
絵って、無地の画面に画家が絵筆を走らせることで人や世界が生まれますよね。
彫刻は、粘土や石の塊を彫刻家が加工することで人や動物が誕生します。
この「無」から「有」を生み出す作業が「神の御術」を連想させるから「すごい!」ってなるワケなんですが、『泉』は、この感覚に対する「カウンター」を狙ってくるんです。
デュシャンは「0から1を生み出した」のではなく「1をAに描き変えた」と思うんです。
文脈
コンセプトとか解釈とかとも言ったりするのですが「なんでもあり」「意味不明」「やったもん勝ち」に見える現代美術には「なぜそうなったか」みたいなのが、あるんですよね。
それを考えるのが面白いです。
作品の前に立つと「さあ、これはどう楽しめばいいでしょーか?」とクイズを出されたような気分になって、ワクワクするんです。
『L.H.O.O.Q』に関していえば、この下ネタタイトルも「モナリザは男だったんだよ」発言も、クイズを迷宮入りさせる罠です。
ただ、こういった罠にわざとハマるのも現代美術の楽しみの1つだと思います。
というわけで「オススメの現代美術は?」と言われたら、まずは語りたいのがこの作品でしたが、現代美術好きなら「知ってるわ!」ってなるかもしれないな、とここまで書いて思ったぼくでした。
質問にお答えするの楽しいですね!?またお待ちしておりますっ