このブログは勝手に「イラスト」と「読書」と「雑記」の3本柱のブログってことにしています。
そんな大事な柱の1本である「読書」カテゴリなのですが、なんと4月は1度も更新されることなく、5月も後半になってしまいました。
ちょっと前には「読書ソムリエ」なんて名誉な呼び方までしていただいてたのにこの体たらく!
本は読んでたんです。
でもここ最近、なんか最後まで読める本に出会えずにいました。
前も書いたことがあるとおり、ぼくは「読むのが苦しいな」って感じた本はとりあえず積んでおくようにしてるんですね。
ここのところ、開いては積み、読んでは積みしていたんです。
「アンテナ、鈍ってきたかな…」
なんて思ってたのですが、久々に来ましたよ!
これはすごく面白かった!
それが米澤穂信さん著の小説『本と鍵の季節』です!
図書委員の男子高校生2人の話
以下、あらすじ紹介程度のネタバレがありますのでお気をつけください。
物語は高校で図書委員を勤めている「堀川次郎」くんの一人称で語られます。
堀川くんは、真面目でお人好しな性格で、成績はそこそこいい方という、ちょっと大人しめな好青年くんです。
なんとなく入った図書委員会で、カウンター当番のペアになった、勉強もスポーツもそつなくこなすイケメンの「松倉詩門」くんと、少しずつ打ち解けあってきたかなー?って頃からお話が始まります。
ある日、2人で図書委員会の仕事をこなしていると、同じ委員会の浦上先輩がやって来て頼みごとをしてきます。
「死んだおじいちゃんが遺した金庫を解錠するダイヤル番号がわからず困っているので2人に開けてほしい」というものでした。
2人は、江戸川乱歩の短篇「黒手組」のなかに登場する暗号を解いたことで図書委員会内でちょっとした名探偵になってたのです。
渋々ながらも成り行きで、金庫を開けるダイヤル番号を開明することになる2人でしたが…
爽やか友情ミステリー
物語は、堀川先輩の持って来た依頼を皮切りに、2人が6つの謎と対面するオムニバス形式のミステリーの構成になっています。
2人が互いの言葉をヒントに少しずつ答えに近づいていきつつ、友情を深めていくお話になっていくわけです。
この、たまたま同じ委員会になった2人が次第に親友になっていく様は、まさに青春そのもので、凄く瑞々しい気持ちで読み進められることができました。
もうほんと、腐女子な貴女が読まれたなら「この2人絶対デキてる!」って確信する勢いです。
でもね、10代後半の男の子の友情ってこんな感じなんですよねぇ。
現実と違うのは、そこにニキビや汗臭さやないくらいです。
殺人事件は起きない
「知り合いが自殺して…」というエピソードは出て来ますが、殺人犯を見つけるようなミステリーはありません。
これって「高校生が主人公」ってなったとき、身の丈にあってる感じがしてぼくは好感が持てました。
いくら探偵ものだからって、毎週身の回りで人が殺されてたら「なんか取り憑いてるんじゃないか!?」ってなっちゃいますよね?
(ただ、毎週殺人事件が起きるっていうのも、ある種の「様式美」みたいなものだとも思いますけどね!)
なんというか「そんな事件、身の回りにないとも言い切れないかもね!」くらいのミステリーなんですよね。
うまいなって思いました。
やけに饒舌
堀川くんと松倉くんは、1人では解明不可能な問題に、2人で声を掛け合いながら、相手の言葉にヒントを見つけて謎を解いていきます。
この会話のやりとりが、やけにウィットに富んでいて、饒舌なんですよね。
「図書室の貸し出しカウンター」というよりは「小洒落た夜のバーカウンター」の方が似合いそうなくらいです。
やっぱ本読んでると語彙力上がるってことですかね〜?
ぼくが高校生の頃なんて
「エアリスたんがぁー!」
とか
「ものの〜け〜なん〜だね〜♪」
とかそんな会話の記憶しかありませんね!
そんな大人びた軽妙なやりとりがテンポを生んでて、すごく読みやすかったです。
大人びてるといえば
こういう「物語の中の高校」ってやけに生徒の自治が認められてますよねぇ!
2人は図書委員として、本の貸し出し返却だけでなく、新しく入って来た本の登録やら、図書館便りの発行やら「それ司書の先生の仕事じゃね?」ってことまでやってます。
ぼく実は高校3年間図書委でしたがそこまでやった記憶がない…。
この物語だけではありませんが、よく生徒会が完全に学校のイニシアチブ取ってたりする話がありますが、そんな高校に通ってたら楽しいだろうなぁ〜、とよく思います。
(まぁ、ぼくはぼくで高校時代楽しかったですけどね)
そんな、元男子高校生は自分の高校時代に思いを馳せながら、女子の皆さんは2人の男子高校生の爽やかな友情にドキドキしながら楽しめるミステリー小説でした!
こちらで試し読みができるみたいです!よければ!