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【読書感想】『平成くん、さようなら』静かに平成を切るお話

また面白い小説を読みました。

これは一気読みでした。

古市憲寿さん著の『平成くん、さようなら』です。

平成くん、さようなら

平成くん、さようなら

 

古市憲寿さんの書く小説

古市憲寿さんは、ラジオ好きにとってはTBSの『文化系トークラジオLIFE』と言う番組で彗星のように現れ、今では各種テレビ番組で引っ張りだこの新進気鋭の若手社会学者 さん、と認識しています。

とぼけたような物腰の柔らかい口調でキレッキレに切り込んでくるトークは、ネット上でよく炎上してたりもします。

ぼくは「絶望の国の幸福な若者たち」があまりに説得力があって好感を抱いていたりします。(このタイトル、現代の若者の将来に対する不安と反比例する現在の生活満足度の高さについてメチャクチャ上手い表現だな!って思いました。)

絶望の国の幸福な若者たち (講談社+α文庫)

絶望の国の幸福な若者たち (講談社+α文庫)

 

 この本、ぼくの好きなこの漫画にも登場するんですよね〜。

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション (1) (ビッグコミックススペシャル)

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション (1) (ビッグコミックススペシャル)

 

そんな古市さんが「平成の終わりに小説を書いたとあっては読まねばならぬ!」と読んでみました。

以下、あらすじ紹介程度のネタバレがあります。

もうすぐ平成が終わる日本が舞台

物語は、上皇陛下が生前退位を発表された頃の東京が舞台です。主人公の「愛ちゃん」は、漫画家だった父親のキャラクターの版権ビジネスを母親と手がける経営者です。(詳しくはかかれませんが、多分「ドラえもん」や「アンパンマン」並みのビッグコンテンツで、印税がわんさか入ってくるみたいです。)

愛ちゃんの彼氏の名前は「平成くん」と言います。

平成くんは、あだ名ではなく「ひとなり」と読む成人男性です。

そーなんですよ、タイトルからてっきり「平成を擬人化した物語かな?」とか思ってしまってました!

平成くんは、学生時代に書いた原子力発電に関する論文が3.11以降脚光を浴びて文才が評価され、平成の代弁者的な若き文化人としてメディアで引っ張りだことなり、現在もたくさんの著書を世に生み出す「平成の象徴」として活躍しているある天才で変わり者です。

はっきり言って脳内で完全に古市憲寿さんイメージです。

平成くんと愛ちゃんは唸るほどお金を持ったビッグカップルとして描かれます。

2人は東京を一望できる家賃120万の部屋で同棲しています。

もう羨まし過ぎます。

そんななか、平成くんが愛ちゃんに「安楽死しようと思ってる」と告げるところからお話は始まるんです。

安楽死が合法化された並行世界

2人はGoogle Homeで日々の予定を確認し、移動のためにiPhoneやアンドロイドからUberを呼び、移動中にsurfaceで仕事をこなし、カーステレオからは安室奈美恵の引退やDA PUMPのUSAが聞こえてきます。まさに現代。

しかし、物語の中の日本では、ある事件をきっかけに安楽死が合法化され、2人の医師と、1人の精神科医からの許可があれば、合法的に自殺できるんです。

このお話は、安楽死することを決めた平成くんと、死を思いとどまらせようとする愛ちゃんの日常を、2019年のゴールデンウィークまで描いた作品なんです。

平成くんは最初「自分はもうオワコンなんだよ」と安楽死を望む理由を語ります。

しかし、全く納得のいかない愛ちゃん。

愛ちゃんは、平成くんが「安楽死を美化してるのではないか?」と考え、安楽死の取材を勧めます。

「確かにそうだ」と考えた平成くんは様々な安楽死の現場を見にいきます。

2人は会話に会話を重ねていき、皮肉なことに今まで以上に恋人らしくなっていきます。

それでも変わらない平成くんの決意。

そしてラスト直前に明かされる安楽死を望む本当の理由。

そこには安楽死の是非と同じくらいの、平成が先送りした現代社会の問題が関わってたのでした。

「安楽死の是非」や「平成の功罪」は置いといて…

さすが社科学者さんです。

全編通して切れ味鋭く「平成」を抉ってくるのですが、あくまでそれらは物語の味付けで、主軸は2人の切ないラブストーリーでした。

モノが豊かにありすぎる世の中では「生きる意味」がないと人は生きていけないのかもしれないですね。

平成くんは、自分が生きてる価値を見出せなくなってしまっています。

そんな平成くんの心を解きほぐしていくのが、愛ちゃんの言葉です。

どれだけITが発達しても、最後に人を動かすのは血の通った人の言葉なのかもしれません。

平成の終わりに、2人はどうなってしまうのか?

そして「さようなら、平成くん」というタイトルの意味は!?

この本、かなりおすすめです。