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【読書感想】『愛なき世界』素晴らしいタイトル詐欺

今日は三浦しをんさん著の小説『愛なき世界』を読み終えたので感想を書きます

愛なき世界

愛なき世界

 

三浦しをんさんといえば「舟を編む」とか「まほろ駅前多田便利軒」とかで有名な方かなー?と思います。

ぼくの個人的な印象なのですが、ある専門家や特徴ある人の一面を上手に切り取ったり物語に必要ない部分はバッサリ省略したりするのがお上手で、なのでハマる人はめっちゃ面白く、省略された部分が気になる人は「そんなことありえない!」って思わず本を閉じちゃうような、そんなお話を書かれるイメージです。

ぼくは「フィクションはファンタジー」と思っていて、例えば漫画作品とかで「剣道の達人」として描かれたキャラの竹刀の持ち方がおかしくても、あまりにユーザーフレンドリーで「こんな経営してたら利益なんで出るわけない!」ってカフェや喫茶店が登場しても、宇宙船に掲げた旗がたなびいてても気にならないタチで、「なんかそれくらいの方がいろんな作品を自由に楽しめるんじゃないかな~」って思ってます。

まぁ、物語の楽しみ方なんて千差万別なんで良いんですけどね。

前置きが長くなりましたが、そんなわけでこの小説も楽しく読める人と読めない人がはっきり分かれそうだなーって思ったんです。

で、ぼくは読んだ本に5段階で星つけるとして、3以下のものはこのブログでは紹介しないことにしているので、つまり楽しめたってことです。

以下、あらすじ紹介程度のネタバレがありますのでご注意ください。

恋愛に興味のないリケジョに恋した料理人の日常の話です

以上、あらすじ紹介終わり。

…って書いちゃうと雑ですね!

もうちょっと語らせてください。

主人公である藤丸くんは、料理の専門学校卒業後に自分が料理人として惚れ込んだ大将の切り盛りする定食屋に住み込みで働くことにします。

大将は、従業員が増えたことでいっときやめていたデリバリーを再開します。

デリバリーの注文第一号となったのは、店の近くにあるT大の研究室でした。

よく来店する、ちょっと浮世離れした不思議なお客さんたちに興味を持っていた藤丸くんは、その本拠地に乗り込み、そこで目にした異世界にびっくりします。

そして大学院で植物の研究をする本村さんに恋するんです。

もともと大将の店の常連だった本村さんの研究室で、藤丸くんは以後デリバリーのついでに研究の内容についても話を聞かせてもらえる間柄になっていき、思わず本村さんに勢いで「好きです」と言っちゃいます。

真面目な本村さんは、藤丸くんの気持ちをちゃんと受け止めて答えをしようと考えます。

しかし、「付き合う」とは何をどうすれば良いのかわからない本村さんは、世に聞く「恋人」が行うようなことに時間を使う間があれば、心なんかなくても子孫を増やしていける植物たちの「愛のない世界」の研究のために時間を使いたいと、断ります。

真摯な本村さんの返答に納得しつつも、植物に興味を持ってしまったので今後もこれまで通り接して欲しいと、藤丸くんの告白はなかったこととしつつも、以後も本村さんへの想いと植物への興味を深めていく藤丸くん。

本村さんの研究室やとなりの研究室の個性的な人たちの研究に明け暮れる日々と、そこへせっせと注文の品を届けに行く藤丸くんの日常を描いたものがたりが展開されていきます。

ぼくらの非日常を生きる人の日常

ぼくは大学院を出ていないので詳しくはわからないのですが、それでも美術というちょっと変わったジャンルの勉強をしに大学に行ったので、少し本村さん達の気持ちがわかるんですよね。

現にぼくの先輩にも「恋愛すると絵を描く時間がなくなるから」といって独身を貫きながら展覧会で賞をとってる先輩もいます。

ぼく自身、学生時代は「美術の大学に行ってるのだから、絵を描くことを最優先にしなきゃ」と思いつつ「とはいえ社会人として働くには直接役に立たないことに時間を使ってるな」とも思い、その贅沢さに本当にありがたみを感じながら「他の大学に行ってる同級生に比べるとどんどん一般常識が欠落していってるんだろうなー」って思ってました。

ちなみに当時の幸せエピソードをまとめた記事はこちらです。

rito.gameha.com

 まぁ結果として、この時に積んだものが今ぼくの人生の趣味の部分といいますか、仕事以外の部分全ての土台になってるので良かったのですが、それでもやっぱ当時は不安を感じてました。

と同時に「おれ達専門的なこと学んでるんだぜ」みたいな変な優越感もあったのも事実で、わざと「普通」から逸れるようなことを意識的にやってたところもあったりして。

とにかくそこは、紛れもなく好きなことにどっぷりと浸かった愛に塗れた世界だったんです。

まぁそんな、いろんな当時悶々と感じていたことを色々と思い出させてくれて「でもやっぱりあの頃楽しかったよなー」なんて、心の中の愛とキラキラをしまってる箱を開けにくるような、そんな物語でした。