年末年始にめっちゃ面白いミステリー小説を読んだので感想書きます。
ジョン・グリシャム著の『「グレート・ギャツビー」を追え』です。
日本では「村上春樹 訳」って触れ込みがポップで踊っている作品なんですね。
でも、村上さん特有のリズミカルな文体が本当に読みやすくて、物語にぐいぐい引き込まれます。
以下あらすじ紹介程度のネタバレありで書きますのでお気をつけくださいね。
物語は、強盗団がプリンストン大学図書館に忍び込んで、フィッツジェラルドの生原稿を盗むシーンから始まります。
厳重な警備をチームワークで掻い潜りながらエモノに辿り着く様は、ルパン三世やミッションインポッシブルを見てるかのようなハラハラドキドキがありました。
しかし、彼らはこの作品では悪者です。
盗んだ原稿をさっさとどこかに高値で売って豪遊することを考えています。
派手な強盗シーンが終わると、突然「ブルース・ケーブル」という男性の生い立ちが綴られます。
彼は学生時代に父親が亡くなり、転がり込んだ遺産を元手に独立系書店を開業します。
彼は本と本の作者を心から愛していて、身を粉にして働いて書店を大きくし、お店は国内有数の大型書店になりました。
と、ここまで舞台が揃ったことでやっと主人公が登場します。
デビュー作以降なかず飛ばずの小説家「マーサー・マン」は、大学の臨時教員として日銭を稼ぐアラサー女子です。
彼女は勤め先に突然雇い止めを申告されます。
しかし彼女は、大学時代に学費に当てた借金を返さなければならず、途方に暮れます。
そんな矢先、「エレイン」という女性に仕事を持ちかけられます。
エレインは、盗難にあった芸術作品を専門に扱う諜報員で、マーサーに難航しているフィッツジェラルドの生原稿の捜査に協力して欲しいと言うのです。
エレインは「ブルースがフィッツジェラルドの生原稿を買ったのでは?」と睨んでるんです。
ブルースには書店経営者とは別の、希少本コレクターという顔があったのです。
ブルースの書店の近所にはマーサーの亡くなった祖母の家があり、今は宿泊用のコテージになっている。売れない小説家のマーサーは起死回生の新作を生み出すため、幼い頃よく遊びに行った祖母の家で執筆に専念することにした。近くには有名な書店もあり、名物オーナーに売れない小説家が助言をもらいに行くことはなんら不自然じゃない。そして無類の女好きのブルースは、マーサーを口説いてうっかりコレクションの話を漏らすかもしれない。というのがエレインの筋書きです。
マーサーははじめは、スパイみたいなこの仕事を断ります。
しかしエレインに「生活に必要なお金は全て出すし、借金を全て肩代わりしてあげる。」という必殺のジョーカーを繰り出されてしまいまうのでした…。
どうっすか。
めっちゃ面白そうじゃないっすか?
めっちゃ面白いんですよ!
「ミステリ」とはじめに紹介しましたが、容疑者はブルース1人です。
しかし、このブルースが、イイ男なんですね。
酒と女と仕事を愛する伊達おこと、もとい伊達オヤジで、マーサーの視点を借りながら、彼の粋な日常を読み進めていくことになります。
女性をとっかえひっかえ…って部分はぼくは性に合わないんですが、ストイックに自分を磨き、情熱的に仕事に取り組み、気の合う仲間達と楽しく過ごす…こーいうの、イイなぁって思います。
常に本と仕事と女に夢中。
ぼくの脳内ではパンツェッタ・ジローラモさんが演じてました。
マーサーはブルースを中心とした小説家のコミュニティにも参加するようになります。
ここで展開される小説家たちの談義というか晩餐会も、饒舌でウィットに富んでて面白いんですよね。
お酒の場で言葉を巧みに操って楽しむ人たちって、なんでこんなに魅力的なんでしょう。
ぼくもこーいう言葉遊びができる知的なオトナになりたいもんです。まじで。まじまじで。
文芸、出版、書店の界隈の濃密な世界に浸りつつスパイ活動を続けるマーサー。
果たしてイレインのいう通りブルースが生原稿を持っているのか?
白黒はっきりする前に、マーサーはブルースに食べられちゃうのか?
借金から解放されたマーサーは新作小説を書き上げることができるのか!?
気になった方は、この素敵な文芸ミステリのページを開いてみてください!