【読書感想】『盤上に君はもういない』全員号泣物語にぼくも泣きました

今日は将棋のプロ棋士の話を描いた『盤上に君はもういない』という小説がとても面白かったので感想を書こうと思います。

帯に「全員号泣!」と書いてる通り、ぼくもウルっときました。

あらすじ紹介程度のネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

というか、第一部のあらましをほぼ書いてしまうので、もう読むつもりの方がいらっしゃったらここまででスターつけてお帰りください。

盤上に君はもういない

盤上に君はもういない

  • 作者:綾崎 隼
  • 発売日: 2020/09/30
  • メディア: 単行本
 

ぼくの棋士に関する知識って『3月のライオン』で知った情報がすべてです。

そんなぼくでも読む手が止まらなくなったくらいわかりやすい内容でした。

ぼくは、女性のプロ棋士がいないことを知りませんでした。

「プロ棋士」と「女流棋士」はグループが違うんですね。

この物語は、史上初の女性プロ棋士が2人誕生し、互いに競い合う彼女たちを取り巻く人たちを含めた愛の物語でした。

第一部の主人公は「佐竹亜弓」という記者の視点で描かれます。

彼女は大事な愛猫を看取るために重要な取材がある日に会社を休むのですが「これだから女は」と責められ勤め先に辞表を出します。

その後、女性初のプロ棋士になるかもしれないと噂されている女の子を知り、フリーの将棋観戦記者になります。

この「諏訪飛鳥」という女の子は、プロ棋士一族に生まれたサラブレッドです。

ただ、将棋一家に生まれたが故に、生まれた時から強い棋士に囲まれ続け、アマチュア会で負けなしという経験が出来ず、誰よりも「勝ち」に渇望しています。

プロ棋士になるための登竜門である奨励会三段リーグで彼女を阻むのが「最年少でプロ入りを果たすのでは!?」と期待されている13歳の天才少年「竹森稜太」君。彼は、AIを相手に棋力を高めた次世代の棋士でした。

女性初か?最年少か!?と世間が盛り上がる中、全く無名だったもうひとりの女性棋士が現れます。

肺に重い病を抱えた、プロへの年齢制限ギリギリの「千桜夕妃」さんです。

彼女はとてつもない実力を持ちながら、病欠による不戦敗が多い棋士だったのです。

三すくみの激戦を制してプロになったのは、稜太くんと夕妃さんの2人。

「史上初の女性プロ棋士」を阻まれた飛鳥ちゃんは、夕妃さんへの再戦に闘志を燃やすのですが、プロになった直後、夕妃さんが忽然と姿を消してしまいます。

…と、いうのが第一部です。

ここまで観戦記者の亜弓さん視点で物語を追っていくのですが、第二部は将棋界に突如現れ、忽然と消えた謎の多い夕妃さんを幼い頃から見ていた弟の「知嗣」さん視点となります。

そこでは、肺の病で大人になる前に死ぬかもしれないと宣告された姉が、将棋と出会うことで生きる活力を得て、しかし棋士になることを親に反対され家出していた経緯が語られます。

その後、飛鳥さん、稜太くん、そして再び亜弓さん…と視点を代えながら、物語は進んでいきます。

飛鳥さんはプロになり夕妃さんと再戦できるのか、夕妃さんの失踪の真相は?

この真相が明かされるラストが「全員号泣!」なんですよ。

そしてこのラスト、亜弓さんが愛猫を看取って「これだから女は」と言われたエピソードはこのために必要だったのか!と思わず唸る勢いなんです。

このお話、とにかく情報量というか、下敷きにしているネタが多いです。

女性初のプロ棋士を追う女性の観戦記者ってことで、通底して「女性が被る社会的不利益」が描かれます。

AIによる将棋界のイノベーションの話も面白いですし、「家族とは」ってテーマで語ることもできます。

そして、この小説は「将棋の話であると当時に、愛の物語だった。」と、読み終えたときには思うんです。

これだけ盛りだくさんの情報を、ぐるぐると視点を変えながら、するすると読ませるなんて、率直に言って著者の綾崎隼さんの表現力半端ないです。

パネェっす。

そして、パネェっす。としか言えないぼくの表現力にぼくが号泣します。