【読書感想】『MaaS戦記』それはまさに戦記

今日は森田創さん著の『MaaS戦記』という本を読んで思ったことを書こうと思うんですが、この本が面白い構造になっていて、本の内容についての感想というより、この本を読んでの読書体験について書きたいなーと思います。

MaaS戦記 伊豆に未来の街を創る

MaaS戦記 伊豆に未来の街を創る

  • 作者:森田 創
  • 発売日: 2020/07/21
  • メディア: 単行本
 

 この本はノンフィクション作品で、著者の森田さんは、東急電鉄の社員さんとのことです。

そんな森田さんが、交通インフラ事業部MaaS担当課長になり、日本初の観光型MaaSをつくっていくお話です。

で、MaaSとはなにかっていうと、Modility as a Serviceの略でして、地域の交通インフラや施設、サービスをスマホひとつでまるっと全方位賄えるようになるサービスのことなのだそうです。

森田さんのミッションは、MaaSを伊豆で浸透させ、新しい観光の需要を生み出すことなわけです。

そんな、望んでもいなかった部署に配属され、はじめは腐る森田さんが、部下たちと絆を深めながらやりがいを見出し、伊豆に飛び込み、奮闘していった記録です。

これはビジネス書ではなく、小説、もしくはドキュメンタリー作品です。

実名が出てくるのに、こんなに本音をぶちまけて大丈夫なんだろうか?と心配になるくらいドラマチックです。

まさに「戦記」!

それだけ、今となっては関係各所と固い絆で結ばれているってことなのでしょうか。

ぼくが印象的だったのが、仁義というか筋というか、そういったものです。

MaaSってのはつまり、全く新しいインフラを伊豆という歴史や伝統がある地にぶち込むわけです。

ぼくらみたいなiPhone大好き人間からしたら、どこかに旅行に行った時にいろんなモノやコトへのアクセスや支払いが全て手元の端末で済むのはとてもありがたいですが、そんな人ばかりではないですよね。

そして、それぞれの土地に集まる人にとって便利なインフラはすでにあったりするわけです。

その地に昔からあるものを大事にすることを怠ってはダメだということがひしひしと伝わってきます。

かといって今のままではいけない。

これは地方ならどこでも見られるジレンマじゃないでしょうか。

このバランスは絶対に間違っては成功しない。

「古い」という表現も適切ではないですね、「伝統」とでも言いましょうか。うーん、そこまで畏まったモノでもない、その地に根付いてるモノです。

何か新しいことするときも、こういったものに対するリスペクトを忘れたら絶対にうまくいかない。

そーいったメッセージを強く感じた本でした。

そしてこれは、何にしても一緒だなーって思いました。

折しもコロナ禍でテレワークやら遠隔会議やらどんどこ導入され、ぼく個人としては大歓迎で、こういった流れに否定的な諸先輩方に対して「いやいや、時代についてかないと!」とか思ったりしてましたが、そんな方々が大事にしているところを全てないがしろにするのもよくないなーってちょっと考えさせられました。

…とか殊勝なこと書いてみましたが、そろそろ「ネットのページが上手く見られないんだけど…」とかInternet Explorer使いながら聞いてくるのはやめていただきたいぼくです。