出藍の誉れ

中学の時、テスト週間になると学習計画と振り返りを記入し、提出すると先生からのコメントともに返ってくる用紙が配られてたんですね。

ある時思いつきで記入欄の真ん中に

「あぶりだし」

って5文字だけ書いて提出したことがあるんです。

そしたら

「本当でしょうね?」

って先生からコメントが返ってきました。

なので

「武士に二言はありません」

と書いてまた提出しました。

後日ぼくの用紙はこんがりと炙られ

「さぁ、どうしてくれようか。」

とコメントが添えられて返ってきました。

「ぼくは武士ではありません」

と書いて提出したところ、それから数日

「卑怯者〜!」

というコメントしか先生は書いてくれなくなりました。

ある時、ホームルームで「将来の目標」を考える取り組みが行われました。

配られた用紙には風船の形をした記入欄があって、提出されたみんなの将来の夢を教室後ろの壁面に貼って、みんなの目標が風船となって天高く舞っていくという美しい取り組みでした。

提出日の前夜「何て書こうかなぁ?」と机に向かっていた少年りとは、小腹が空いていることに気がつき、キッチンでカップラーメンを物色しました。

そのとき、用紙の風船の形と、自分が見つけたカップラーメンの蓋のサイズが全く同じだということに気がついてしまったのです。

我慢ができなくなったぼくは、用紙にカップラーメンの蓋を貼り付けて提出しました。

実は、将来の目標もちゃんと書いたんですよ。

先生がびっくりしたあと「実は書いてました〜」って蓋をはがそうと思ってたんです。

しかし、数日後教室の後ろの壁面には、みんなの将来の目標が書かれた風船に紛れて、カップラーメンの蓋が舞っていました。

先生は、ぼくになにも問いただすことなく「おもしろかったから」とそのまま貼ってしまったのです。

ちゃんと将来の目標を書いてあることも伝えたのですが剥がすことを許されなかったのは、ささやかな罰だったのかもしれません。

その先生とは、大人になってからまた連絡を取るようになり、今でもLINEで繋がっています。

そういえば確か、最初に電話した時も

「久しぶりー!いま何してるの?」

と聞いてくれた先生に

「あ、はい!いま電話してます!」

って答えたんでした。

こんなしょーもない生徒だったぼくですが、先日近況を報告してると「出藍の誉れだ」って言っていただきました。

たいへん恐縮しました。

以前にも

「学生の頃はご迷惑をおかけしました」

なんて言ったら

「迷惑なんて何もかけられたことないですよ」

と言われたことがあります。

この先生に限らず、ぼくは今も連絡をとっている恩師が何人かいます。

ニュースってのは悪いことを報じることの方が多いので、日夜全国のけしからん教師がたくさん報じられて、そのたびに「日本の教育は」的なムードに包まれ「自分も昔こんな教師にあたったことがあって…」って話もでてきて、スパイラルで「教師の質はどうなってるんだ」ってなるんですが、そのたびぼくはお世話になった恩師たちのことを思ってちょっと悲しくなります。

もちろんぼくも「そーいえば」って思う先生にあたったこともあるんですが、そんな先生ばかりではなかったのは、運が良かったってことなんでしょうね。

「人には良いところと悪いところが同じ数だけある」って教えてくれた先生もいました。

いい人間もわるい人間も同じ数いるってことなんでしょう。

いい先生もわるい先生も同じ数いるんですよきっと。

わるい先生はいてもらったら困るんですが、採用するかどうかを決めるのも人間なんで仕方ないんでしょうし、じゃあどうしたらいいんだ?ってなったらこれからの時代「AIで決めましょう」って話にもなりかねませんしね。

そんなわけでぼくも「良い先輩上司にあたった」と若手に思ってもらえるよう頑張ろうと思うんです。

家ではこんなイラスト描いてますけどね。

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